院長です。
前回からの続きで、今回はナッツアレルギーの症状と診断についてお伝えします。
ナッツアレルギーの症状は、他の食物アレルギーの場合と同様、さまざまなものがあります。以下に主な症状をまとめてみます。
・皮膚症状:かゆみ、発赤、じんましんなど
・粘膜症状:口の中のかゆみや違和感(イガイガ・チクチクする)、唇の腫れ、目の充血や腫れ、涙、かゆみなど
・呼吸器症状:鼻水、鼻づまり、くしゃみ、のどの違和感やかゆみ、息苦しさ、喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー)など
・消化器症状:吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、血便など
・その他症状:頭痛、眠気、意識障害など。
多くの場合、原因食物を食べてから2時間以内に症状が起こります。症状がひとつだけがあらわれる場合もあれば、急に複数の臓器に症状があらわれる(アナフラキシーと言います)こともあります。食べる量や体調によっても、症状の出かたが異なります。
ナッツアレルギーに限らず食物のアレルギーの診断については、まず食事の後に何らかの症状が出たときに、食物アレルギーを疑います。食物アレルギーであれば、同じ食品を食べるとくり返し症状が出ます。
原因の食べ物を特定するには、血液検査で特異的IgE抗体(クルミであれば、クルミの特異的IgE抗体)を確認することで推測することができます。確定診断をするためには、病院で実際にその食品をごくわずかの量を食べてみて症状があらわれるかどうかを確認する「食物経口負荷試験」という検査が必要になります。食物経口負荷試験は、時には重篤な症状が出現することもあるため、病院で十分な準備を整えて、できるだけ安全に実施する必要がある検査です。そのため、すべての病院で実施できるわけではありません。
当院では、実際に食べた食事の内容を確認し、その結果と症状からその食べ物が原因であることが強く疑われ、特異的IgE抗体が陽性であれば、食物アレルギーであると判断しています。ただし特異的IgE抗体は症状がなくても検出されることがあります。症状がない場合は、アレルギーがあるとは必ずしもいえないので、注意が必要です。
(※クルミとペカンナッツ、カシューナッツとピスタチオの間には強い相関性があり、どちらかのアレルギーと診断されたお子さんでは、共に除去が必要です。)
ナッツアレルギーが増加した理由についてははっきりしたことは分かっていませんが、2005年以降のクルミの年間消費量、カシューナッツ及びアーモンドの年間輸入量が増えており、国内での消費量の増加が要因の一つである可能性が考えられています。
今後もナッツアレルギーのお子さんが増えてくる可能性があります。ナッツ類はクッキーやケーキ、焼き菓子などによく使われており、お子さんが食べる機会も多いと思います。ナッツアレルギーは重篤な症状を起こす場合が多いので、アレルギーを疑う症状がみられた場合は遠慮なくご相談ください。
(2024.12.6)