院長です。
インフルエンザが流行していますが、早期の診断と治療により、ほとんどのお子さんは数日~1週間の経過で回復していきます。ただし中には重症化する場合があり、最も重い合併症がインフルエンザ脳症です。死亡率は約30%、後遺症も約25%の子どもに見られるとされています。
インフルエンザ脳症は、発熱後1日以内にけいれんと意識障害が出現し、遅れて全身の臓器障害が現れます。主に5歳以下の乳幼児に起こります。
インフルエンザ脳症の主な初発神経症状として、意識障害、けいれん、異常言動・行動があげられます。インフルエンザ脳症の初期には、異常言動・行動がしばしばみられることがあり、脳症へ進展しない異常行動・言動や熱せん妄(※註)との鑑別が重要となります。
(※ 熱せん妄とは、高熱に伴って発生する意識障害や認知機能の変化を指します。意識の混乱やぼんやりとした状態、幻覚や妄想、不安や興奮、注意力の低下、時間や場所の認識の障害、といった症状がみられます。)
異常言動・行動が概ね1時間以上続き、意識状態が明らかに悪い場合は、インフルエンザ脳症に進展する可能性が大きく、すぐに受診が必要です。異常言動・行動の間歇期には意識障害がなく、異常言動・行動が短時間で消失する場合は、経過観察しても良いと考えられています。ただし、けいれんを合併した場合はインフルエンザ脳症に進展する可能性が大きいと考えなければなりません。以下に、異常言動・行動の例を示します。
(引用元:インフルエンザ脳症ガイドライン【改訂版】 平成21年9月)
インフルエンザ脳症と解熱剤との関連も指摘されていて、インフルエンザに使用できる解熱剤はアセトアミノフェン(アンヒバ坐剤®、アルピニ―坐剤®、カロナール®など)です。アスピリン(商品名:バファリン®など)やメフェナム酸(ポンタール®など)、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン®など)は使用しないでください。特に市販薬を使用する場合は、薬の成分を必ず確認してください。
インフルエンザ脳症の発症を予防するには、インフルエンザワクチン接種が有効です。インフルエンザワクチンの最も大きな効果は、重症化を予防することです。ワクチンにはインフルエンザによる重篤な合併症や死亡を予防することが期待されています。
今シーズンについては、インフルエンザワクチン接種は終了しています。今後は、インフルエンザに罹らないよう、日常の感染対策が大切になりますね。インフルエンザの流行が全くみられなかったコロナ禍の時期を思い起こせば、咳エチケットと適切なマスクの着用が特に重要なのではないかと思います。まだしばらくの間はインフルエンザの流行が続くと考えられますので、普段通りの生活を楽しみつつ、それぞれに可能な限りの感染対策も意識していただきたいと思います。
(2025.1.19)