ヒトメタニューモウイルスについて

院長です。

最近になり、海外でのヒトメタニューモウイルスの流行、特に中国での流行が話題になっており、ご存知の方も多いのではないかと思います。日本でも2022年後半から、ヒトメタニューモウイルス感染症の流行が確認されています。

ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は、呼吸器感染症を引き起こすウイルスの一種で、特に小児や高齢者、免疫力が低下している人に影響を与えることが多いとされています。このウイルスは2001年に発見された比較的新しいウイルスで、RSウイルスと同じニューモウイルス科に属しています。

症状はRSウイルス感染に似ていますが、RSウイルスにはほぼすべての乳幼児が2歳までに感染し1歳未満での感染が多いのに対し、ヒトメタニューモウイルスは、2歳までに感染するのは約50%です。ほとんどの人が5歳までに初めての感染を経験し、生涯を通じて何回も感染します。

感染経路については、主に飛沫感染や接触感染を通じて広がり、感染者の咳やくしゃみ、またはウイルスが付着した物に触れることで感染します。感染初期の症状は、咳、鼻水、鼻づまり、発熱などですが、重症化すると喘鳴や呼吸困難を伴うようになり、細気管支炎や肺炎を発症することがあります。2歳未満の乳幼児にとっては重症化リスクが特に高いので、注意が必要です。また、一度の感染では十分な免疫を得られないため、再感染のリスクも残ります。

ヒトメタニューモウイルスの感染の診断には「抗原検査」が利用されており、6歳未満の子供に保険適用となっています。インフルエンザと同じように、鼻や喉の粘膜を綿棒で拭き取る方法を用いて行うものです。ヒトメタニューモウイルスに特効薬は無く、検査結果が陽性であっても治療方針はかわらないので、検査は基本的に重症(になる可能性が考えられる)例に対して行われます。

ヒトメタニューモウイルスは多くの国で、インフルエンザウイルスやRSウイルスとともに検出されており、今後国内でも流行するのではないかと懸念されています。手洗いやマスクなどの基本的な感染対策を行って、大きな流行にならないように皆で協力しましょう。

(2025.1.14)