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これまでの歩みを振り返る その5  産む力・生まれる力

院長です。

いつもこのブログをお読みくださり、ありがとうございます。

このシリーズの前回の投稿から、2か月近く経ってしまいました。今回は、産婦人科医との協働開業を解消するまでの経緯について、お話ししたいと思います。

当時のクリニックでは、開業当初から、畳のスペースでのフリースタイル出産を取り入れていました。ほとんどのお産は分娩台ではなく、畳の上で、それぞれのお母さんが自由な姿勢をとって赤ちゃんを産んでいました。

数多くのお産に立ち会い、生まれたばかりの赤ちゃんをみているうちに、同じくらいの週数で生まれた赤ちゃんでも、さまざまな違いがあることに気づくようになりました。

呼吸の状態、皮膚の状態、泣き方。さらに、狭い産道を通ってきたことによる頭の変形や、顔や体の皮膚の傷など、その様子は赤ちゃんによってさまざまでした。

小児科医の眼から見ると、お産のときに赤ちゃんにかかる負担も、一人ひとり違っているように感じられました。

「この違いには、お産の経過が関係しているのではないか」

そう考えたわたしは、それまで赤ちゃんが生まれる直前に呼んでもらっていたのを、もう少し早い段階、陣痛が本格的になってきたころから呼んでもらうようにしました。そして、お産がどのように進み、赤ちゃんがどのように生まれてくるのかを、できるだけ最初から見せてもらうことにしました。

そこで強く感じたのが、産むお母さんと、担当する助産師との関係性の大切さでした。

精神的な緊張が強いと、陣痛が弱まり、お産が進みにくくなることがあります。一方で、お母さんがリラックスし、ご自身のからだと、お腹の中の赤ちゃんに集中できていることは、お産が進んでいくうえでとても大切です。

そのために助産師は、限られた時間のなかで目の前の産婦さんを理解しようと努めます。表情や声、呼吸、体の動きなど、さまざまなものを感じ取りながら、
 「この人と一緒にいれば大丈夫」
そう思ってもらえるような関係を築いていきます。

産婦さんと助産師の間に信頼関係ができていると、お母さんだけでなく、赤ちゃんにとっても負担の少ない、スムーズなお産につながっている――。数多くのお産に立ち会うなかで、わたしはそう感じるようになりました。

そして、次第に一つの考えにたどり着きました。

本来、お母さんには「産む力」が備わっている。
赤ちゃんには「生まれる力」が備わっている。

その二つの力を最大限に引き出し、命の誕生へと導いていくこと。それが、助産師の大切な役割なのだと気づいたのです。

そう考えるようになると、一つの理想のかたちが見えてきました。

妊娠中から一人の助産師が継続してお母さんに関わり、そのままお産までを担当することです。

しかし、当時のクリニックでは、お産の数が増えるにつれて助産師の人数も増えていました。さまざまな工夫をしても、入院したときに初めて出会った助産師がお産を担当する、ということを避けるのは難しくなっていました。

また当時、出産をより医療的に管理していこうとする流れが、次第に強くなっているように感じていました。

人が本来持っている力をできるだけ引き出すことよりも、少しでも基準から外れる徴候があれば、医療の力によって修正していく。わたしの眼には、出産を取り巻く環境が、そのような方向へ進んでいるように映りました。

一方で、わたしは数多くのお産に立ち会うなかで、お産の環境や、生まれるまでの過程が、赤ちゃんのその後の成長にとって決して小さなものではないと感じるようになっていました。そして、その経験を重ねるほど、自分が大切にしたいと考えるお産と、現実の流れとの間に、大きな隔たりを感じるようになりました。

このままの形で続けていくことは、当時のわたしには受け入れることができませんでした。

そして、産婦人科医との協働開業を解消し、新たに小児科クリニックをつくることを決心しました。

開業医となって、ちょうど10年。

それまでのクリニックを離れ、そこで学んだことを、今度は新しい場所で、小児科医として活かしていく道を探してみよう。そう考えました。

ただ、この時点では、現在のクリニックや助産院につながるような具体的な構想があったわけではありません。

それが、どのようにして今のかたちにつながっていったのか。

長くなりましたので、今回はここまでにしたいと思います。

ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

次回は――できる限り早く、この続きを書きたいと思っています。

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