Blog
ブログ
ブログ赤ちゃん
これまでの歩みを振り返る その4 大切な準備の時間
院長です。
前回のブログで、生まれてからもまったく泣かなかった赤ちゃんのお話を書きました。その赤ちゃんとの出会いは、わたしにとても大きな影響を与えました。
わたしたちは、「赤ちゃんは生まれたら元気に泣くもの」と教わります。実際、赤ちゃんが泣くことは、呼吸が始まったことを確認する大切なサインです。
では、なぜあの赤ちゃんは泣かなかったのでしょうか。その答えを考えるためには、お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんのことを少し知る必要があります。
お腹の中の赤ちゃんは、まだ肺で呼吸をしていません。胎盤とへその緒を通して、お母さんから酸素や栄養を受け取りながら成長しています。そのため、赤ちゃんの肺の中は空気ではなく「肺液」と呼ばれる液体で満たされています。この液体は、肺が成長するために大切な役割を果たしています。
ところが、赤ちゃんは生まれた瞬間から肺で呼吸を始めなければなりません。そのための準備は、実は陣痛が始まった頃からすでに始まっています。
陣痛が始まると、赤ちゃんの肺の中で作られる肺液の量が減り始めます。お産が進むにつれて肺の中の液体の量が少しずつ減ることとなり、生まれた後に空気を取り込むための準備が進みます。さらに、赤ちゃんが産道を通るときには胸が圧迫され、肺の中の液体が押し出されます。そして生まれた後の最初の呼吸によって肺は空気で満たされ、残った肺液は徐々に吸収されていきます。つまり、お産の過程そのものが、赤ちゃんが呼吸を始めるための大切な準備期間なのです。
私が経験した「泣かなかった赤ちゃん」は、陣痛が始まり、産道を通って生まれ、そのままお母さんの胸に抱かれました。産声はありませんでした。けれども、赤ちゃんは穏やかに呼吸をしていて、皮膚の色もみるみるうちにきれいなピンク色になっていきました。今振り返ると、その赤ちゃんはお産の経過の中で十分な準備ができていたため、激しく泣くことなく呼吸へ移行できたのではないかと思います。
もちろん、すべての赤ちゃんがそうなるわけではありません。
陣痛が始まってから生まれるまでの時間には大きな個人差があります。初めてのお産かどうかによっても違いますし、お母さんや赤ちゃんのさまざまな条件も影響します。お母さんにとっては、とても長くつらい時間に感じられることでしょう。けれども、その時間は赤ちゃんにとって「お腹の中の生活」から「お腹の外の生活」へと移るための、とても大切な準備の時間でもあるのです。
そして、その大切な時間をお母さんのそばで支え続けているのが助産師です。お産に立ち会うたびに、助産師の役割の大きさと重要さを感じていました。
次回は、この経験をきっかけに、さらにお産に興味を抱くようになったわたしが、現在のクリニック開設に到るまでの過程を書きたいと思っています。
お読みいただき、ありがとうございました。