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これまでの歩みを振り返る その3:泣かない赤ちゃん
院長です。
気が付けば、このシリーズの前回投稿から1か月以上が経っていました。時間が経つのがほんとうに早い!
さて、すべてのお産に立ち会うことにして、24時間365日拘束の日々が始まりました。いつ呼び出されるか分からない毎日。当然、遠出はできません。記憶に残っていないのですが、5年くらい、そんな日々が続いたと思います。その後、1か月に1度、後輩の小児科医に週末の担当をお願いすることができるようになり、家族で出かけたりすることができるようになりました。
お産は、いつあるか分かりません。夜、夜中、早朝の呼び出しもありました。夜中に呼び出されそのまま朝からの外来に突入、ということも珍しくありませんでした。外来診察中にお産が重なれば、来院されている方にはしばらくお待ちいただいていました。
真夜中に呼び出されて、「眠いなあ」「しんどいなあ」と思ったことはよくありましたが、「行くの、いややなあ」と思うことが一度も無かったのは、わたしにとって、とても充実した時間だったからなのだろうと思います。
開業当初は、赤ちゃんが生まれる直前に分娩室に入り、生まれた赤ちゃんを受け取って処置台に移り、羊水や血液をふき取って、診察をして、臍帯の処置をして、お母さんの処置が終わったらお母さんのもとに赤ちゃんを戻して抱っこしてもらい、赤ちゃんの状態と入院中のスケジュールをお話しして、わたしの役割は一旦終わります。クリニックでは、妊娠中にお母さんか赤ちゃんのどちらかに問題が生じたときには病院に紹介することになっていたので、状態の悪い赤ちゃんが生まれてくることは、めったにありませんでした。実際、赤ちゃんの呼吸状態が悪く、生まれてすぐに蘇生の処置が必要となった赤ちゃんは2人だけでした。人工呼吸をしながら病院に搬送したのは、そのうちのお一人だけ。「生まれてすぐに蘇生の処置が必要になった場合に備えて」始めたすべてのお産への立ち合いでしたが、そのような機会はほぼ、無かったのです。
一方で、同じお産というものは無い、ということを感じていました。それぞれに妊娠・分娩の経過が違い、生まれてくる赤ちゃんの状態も、細かいところまで見ると違いがありました。たとえば、生まれてすぐに元気に泣いて皮膚の色がピンクになり、しばらくすると泣き止んで呼吸が穏やかになる赤ちゃんもあれば、元気なんだけど、しばらくしてしんどそうな呼吸になり、30分から1時間かかってようやく落ち着いていく赤ちゃんもいます。同じ週数、同じくらいの体重でも、それぞれに違いがある。この違いはどこから来るのだろう?
そんなことを考え始めていた頃、たった一度の経験をすることになりました。お産のときのお母さんの姿勢は四つ這いに近い状態で、生まれた赤ちゃんを、上体を起こして立て膝になったお母さんの胸にそのまま抱っこしてもらったのです。助産師が介助しながら、お母さんが自分の手で赤ちゃんを取り上げたような形になりました。赤ちゃんは、まったく泣きませんでした。当然、すぐに状態の確認に行きましたが、生まれてすぐにお母さんの胸に抱かれた赤ちゃんは、穏やかに呼吸していて、皮膚の色もすぐにピンクになっていったのです。羊水の中で過ごしていた赤ちゃんが呼吸をするためには、生まれてすぐに泣くことが重要だと教えられてきた者としては、衝撃でした。
なぜこの赤ちゃんは、泣かずに呼吸ができるようになったのか。それを突き詰めて考えていく中で、わたしの関心は、次の段階に移ることになりました。
長くなりましたので、今回はここまでにしたいと思います。お読み下さりありがとうございました。続きは出来るだけ早く書きたいと思います。