院長です。離乳食に関することで、時々相談を受けることがあります。ほとんどの方はある程度離乳食に関する情報はお持ちで、「本に書かれているように」あるいは「離乳食教室等で学んだとおりに」進まないことについての悩みや、授乳との兼ね合いについての悩みが多いように思います。
市販されている離乳食に関する本には、進め方の目安や、それぞれの時期にあった具体的なメニューが掲載されています。中にはこれが離乳食かと思うくらい立派な食事の写真があったりしますが…、一番基本的かつ大切な考え方が抜けていることが多いのです。それは、『離乳食は、母乳(ミルク)だけで育てる時期から家族の普段の食事への架け橋であり、決して特別なものではない。』『離乳食は、母乳(ミルク)を続けながら、家族の食事がそのまま食べられるようになるまでの食事である。』ということです。
お母さんが食べた物は、羊水や母乳の味にも影響をすることが知られています。赤ちゃんは、お母さんのお腹の中にいるときから、羊水や母乳を通してさまざまな味を経験しており、そこにはお母さんの食事が反映されています。つまり、家族の普段の食事の味を、離乳食開始前から経験していると言えるのです。考えてみれば、長い日本列島、地域により食文化が違い、家庭によって食習慣が異なることは当然のことです。赤ちゃんそれぞれに個性があり、食欲、摂食行動、成長・発達パターンが違うということも考え合わせれば、離乳食をマニュアル通りに進めようとすること自体に無理があるのです。
離乳食は、授乳と切り離して考えることはできません。また、母と子の愛着形成にも大きく影響を及ぼすものです。ただ食べられればよいというものではありません。そういったことから、次回(10月24日)の「小児科の先生とおはなししよう」では、「愛着形成の視点から母乳育児・離乳食を考える」というテーマで、少しお話しさせていただきたいと思っています。関心のある方は、是非ご参加ください。 (2014.10.5.)