児童虐待通告数の増加

院長です。一昨日、児童虐待の通告数が2万人を超えたとのニュースが報じられました。(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140306-00000661-yom-soci
これは警察が、虐待を受けているとして児童相談所に通告した18歳未満の子どもの数で、前年よりも約5200人増加しているそうです。厚生労働省が出している統計(児童相談所の相談対応件数)とは別のものですが、毎年増加傾向にあることに変わりはありません。先日、地元の精華町での対策協議会に出席しましたが、精華町の現状もこの報告とほぼ同じ傾向にありました。程度の差こそあれ日本中のあらゆる場所で、同様のことが起こっていると考えてよいのだと思います。
ここからはあくまでも僕の私見ですが…
虐待には世代間連鎖がみられるといいます。すべての例にあてはまるわけではありませんが、子どもを虐待する親自身が、かつて自分の親から虐待を受けていた、そういう傾向があるということです。今、虐待をしている親の、さらにその親の世代は、ちょうど僕の年齢より少し上の世代が中心となります。このホームページの「ご挨拶」でも書きましたが、日本では昭和から平成に変わった1990年代から、児童虐待が大きな問題となりました。ちょうどその30年前、1960年代に日本での施設分娩化(自宅分娩から施設での分娩に移行)が起こっています。米国の施設分娩化が1930年代に起こり、その30年後の1960年代に児童虐待が大きな問題となり始めたことと符合します。児童虐待が増加し続けている原因のすべてを、分娩環境の変化に求めることには無理がありますが、妊娠中の女性や出産後の親子への様々な対策が施されてきているにもかかわらず、その効果がほとんどみられない(数字として表れてこない)現実を目の前にすると、「分娩環境を整える」という、これまでになかった視点からのアプローチが必要ではないかと考えています。「分娩環境を整える」という事を端的に言えば、「ああ、この子を産んでよかった」「もう一度産みたい」と思えるような、そんなお産ができるような環境を整えることです。「母子ともに元気」というだけではなく、あたたかく見守られているという安心感の中で、お母さんがわが子と出会えるような分娩環境を整えることが必要になっているのではないかでしょうか。そしてこれはまた、少子化対策の一つにもなるのではないかと思います。
これまでの連鎖を断ち切り、あらたな連鎖の出現を未然に防ぐために、お産を中心として妊娠中から出産後長期にわたり一貫してサポートする体制の整備をできる限り早く行うこと、それが今求められているのではないかと思うのです。  (2014.3.8.)