小児の新型コロナワクチン接種について

   新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の感染症法上の位置づけは今年5月8日に5類感染症に変更となり、季節性インフルエンザなどと同じ扱いになりました。感染者の全数届出や濃厚接触者への行動制限は廃止されました。

   当院では従来通り生後6か月から11歳の小児の新型コロナワクチンの個別接種を行っていますが、初回シリーズ(1回目と2回目の接種)を希望される方は依然少ない状態が続いています。

   COVID-19は5類感染症になりましたが、ウイルスの特徴に何ら変わりはなく、感染した場合の症状も同様です。

    6月9日に日本小児科学会は、「小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方(2023.6追補)」発表しました(http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=507)。その中では、「日本人小児のSARS-CoV2感染者の中で、稀ではあるが一定数は急性脳症や心筋炎を発症しており、その多くが後遺症を残していること」、「死亡に至った症例もいること」、「感染者の一部には発症後1か月以上にわたり症状を訴える方がいること」が示され、「小児に対するワクチン接種には、発症予防や重症化(入院)予防の効果があること」、「現在までのところ接種推奨に影響を与える重篤な副反応はないと判断されていること」が指摘されています。結論として、「今後、感染対策が緩和される中、多くの小児感染者が発生することが予想され、重症化を予防する手段としてワクチン接種は引き続き重要と考えます。接種に伴う利益は副反応等の不利益を上回ると現時点では考えられ、引き続き小児への接種を推奨します」と述べています。

   成人ではワクチン接種がある程度進み自然感染した人の割合が増えたことで、これまでのような大きな感染の波は起こりにくくなっている印象があります。一方、初回シリーズのワクチン接種を済ませた子どもたちの割合は依然として低く(5歳から11歳で、およそ18%)、小児科学会が指摘している通り、今後多くの小児感染者が発生する可能性があります。

    以前のような日常を取り戻しつつある中で、新型コロナワクチン接種を行う必要性を疑問視する意見もありますが、わが国に小児の新型コロナワクチン接種についての医学的な見解は、日本小児科学会が示している通りであり、その重要性・必要性は当分の間変わらないものと考えています。引き続き当院では、生後6か月から11歳の小児の新型コロナワクチンの個別接種を行っていきます。 (2023.6.18)