小児の新型コロナウイルス感染後の死亡例の検討と、新型コロナワクチン接種について

院長です。明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

新年早々の情報提供になります。国立感染症研究所が昨年末に公表した、2022年1月1日から9月30日に新型コロナを発症もしくは診断された20歳未満の死亡例について行った調査結果です。

死亡例は合計62例でした。このうち、実地調査ができた57例について詳細に検討されています。以下に示すのは、事故などによる外因性死亡と考えられた7例を除く、内因性死亡50例についての検討結果です。(図はすべて、新潟大学医学部小児科学教室のSNSより引用させていただきました。)

死亡例のほとんどが12歳未満のワクチン接種が進んでいない世代で、そのうち一番多かったのが5~11歳、次いで1~4歳でした。

基礎疾患が無くても死亡する例が半数以上を占めていました。

死亡例のうち、ワクチン接種対象年齢である5歳以上の26例について検討したところ、ワクチン未接種の方が大部分であり、ワクチンを2回接種していた方はいずれも12歳以上で、最終接種から3カ月以上が経過していました。12歳未満のワクチン接種済みでの方での死亡例はゼロでした。

死亡原因は、中枢神経系の異常(急性脳症など)が19例で最も多く、次いで循環器系の異常(急性心筋炎、不整脈など)が9例となっていました。

発症日は、50例のうち48例について得られ、発症から心肺停止までの日数が、中央値2.0日で、その内訳は0-2日が25例(52%)、 3-6日が14例(29%)、 7日以上が9例(19%)であり、発症から死亡までの日数が、中央値3.0日、内訳は0-2日が22例(46%)、 3-6日が14例(29%)、 7日以上が12例(25%)でした。オミクロン株の流行後、発症してから急激に増悪する例が増えています。

この報告の検討期間中における、20歳未満の新型コロナウイルス感染による死亡率は、0.0013%(62/20歳未満の総感染者数)でした。

日本における5歳から11歳の新型コロナワクチン接種後の死亡例は2例報告されており(接種開始から2022年11月13日まで)、現時点において、ワクチンとの因果関係があると結論づけられた事例はありません。この間の総接種回数は3,606,632回ですから、頻度は0.00006%となります。接種回数ごとの頻度は下記の通りです。

1回目接種後  0例/1,677,746回接種 0%
2回目接種後  1例/1,604,940回接種 0.00006%
3回目接種後  1例/323,946回接種  0.0003%

新型コロナウイルスに感染した場合の死亡、新型コロナワクチン接種後の死亡、それぞれの頻度を単純比較すれば、新型コロナウイルス感染後の死亡の頻度の方が大きいことは明らかです。

オミクロン株の出現以降、それまで少なかった小児の死亡例が非常に増えてきています。感染者が多くなっているので、たとえ死亡率が低くても、死亡数が増えてしまっているのです。

今回の検討では、死亡例の多くが新型コロナワクチンを接種していない、もしくは接種の対象年齢ではなかった年代の子どもたちです。また、基礎疾患が無い子どもが半数以上を占めており、感染した誰に起こっても不思議ではありません。急激な経過で無くなる場合が多いことを考えれば、子どもたちにおいても新型コロナワクチン接種はとても大事であり、ワクチン接種後の副反応の可能性を考慮しても、子どもたちにおいても新型コロナワクチンを接種するメリットの方が大きいと考えられます。
(2023.1.3)