児童クラブの感染対策

院長です。
児童クラブでの感染対策について、前回に続いて沖縄県立中部病院感染症内科の高山義浩医師のFacebookでの投稿を、ここでも原文のまま引用させていただきたいと思います。詳しく解説してくださっていますので、皆さんも参考にしていただければと思います。

(以下、引用)

沖縄県中部地区で、臨時の学童クラブを立ち上げる動きが始まっています。公民館を利用して、ボランティアの女性たちが働く家庭を支えようとしているのです。
今日の夕方、既存の学童クラブの担当者に加えて、こうしたボランティアの方々に対して、新型コロナウイルスの流行に備える感染対策について解説させていただきました。

質疑応答がとっても充実していたので紹介します。全国でも動きがあると思います。参考としていただけますと幸いです。

―― 学童クラブの感染対策で、もっとも心がけるべきことは?

症状のあるお子さんが来ることがないよう、それぞれの家庭が心がけることです。毎朝の検温と症状確認をしっかりしていただいて、もし発熱や咳などの症状があるなら休ませること。これが一番大切なことです。

―― 学童クラブの入り口で体温測定をした方がいいか?

いえ、原則として各家庭で行うべきことです。連れてくるだけでリスクが生じています。公園で遊ばせるとき、買い物に行くときなど、子供が外出する理由は様々です。学童クラブに限らず、子供の健康状態をしっかり把握いただいて、症状があるなら休ませること。これを地域のコンセンサスにしていきましょう。

―― 鼻水が出ているだけでも休ませるべきか?
新型コロナウイルス感染症では、鼻炎症状は少ないとも言われています。しかし、それは大人たちの症状であって、子供の感冒症状は多様じゃないかと思います。その意味では、鼻水が出ているだけでも、症状のある子に分類されます。
ただ、ここで気を付けたいのは、喘息のあるお子さんとか、花粉症などアレルギー体質のお子さんのこと。あまりに大人たちが過敏になりすぎると、こうした子供たちが排除されることになりかねません。

風邪なのかどうかの判断は、それぞれの親に任されるべきです。他の親が「あの子と遊ぶな」といったことを自分の子供に言って、差別やいじめを助長するような社会にはなってほしくないです。ここは日本人、試されてますね。

―― 本や遊具の共有で感染リスクがあるか? 学童には置かない方が良いか?

どうせ子供たちって、直接に触れ合って遊びますよね。それを制限することができない以上は、間接的な接触である本や遊具を制限しても意味ないです。

―― 子ども同士が触れることのないよう、一定の距離をとらせるべきと言われた。
無理ですよね。無理なことを求めてはいけません。現場が疲弊するだけでしょう。言うだけの行政は、それで責任回避できるかもしれませんが、それで現場に挫折感や罪悪感を与えてしまうことを理解すべきです。

せっかく良かれと思って、学童クラブを拡張していただくわけですから、親たちも地域も、ある程度は腹くくっていただく必要があります。破綻することが明らかな対策を求めておいて、感染が広がったときに「学童は何やってたんだ」と糾弾する。これって不幸な社会ですよ。

―― 子供たちにマスクを付けさせた方が良いか?
いりません。どうせ、子どもは正しくマスクを着用できません。正しく捨てることもできません。新型コロナへの感染予防では、目鼻口など顔を触らないことが重要ですが、マスクを着けている子どもは、気になって顔を触りまくり、ついでにマスクで遊びます。しかも、環境を触りまくる子どもの手は常に汚染されていて、感染リスクを高めているかもしれません。

基礎疾患のあるお子さんが、何らかの理由で人混みに行かざるをえないときは、きちんとした指導のもとでマスクを着用することはありうると思います。でも、健康な子どもが学童クラブでマスクを着用する意義はありません。

―― 子どもたちのコップは専用にすべきか?

はい、それは必要です。紙コップなり、自宅より持参したマグカップなりを専用とすることが感染予防になると思います。

―― 子供たちの手洗いのタイミングはどうしたらいいか?

学童クラブに入るとき、食事をするときを原則として、加えて手が汚れたときに適宜やってください。あまり神経質になることはありません。

―― アルコールが手に入りにくい。泡盛で消毒してもいいか?

ダメです。70%の濃度が必要です。泡盛では届きませんね。ウォツカじゃないと・・・。アルコールが手に入らないなら、流水と石鹸の手洗いでもいいです。新型コロナウイルスの皮膜は脂肪で出来てるので、石鹸でも簡単に破壊されます。

―― 部屋を加湿した方がよいか?

インフルエンザでは加湿した方が感染予防になると言われてますね。しかしながら、新型コロナでは加湿の効果があるかは不明です。これまでのクラスター事例をみると、むしろ湿度の高い空間が多いとの指摘もあります。つまり、あえて加湿する必要はありません。しっかり換気の方が意味があります。

―― 学童で集まるのは、何人ぐらいまで良いのか?
集まる人数、つまりクラスターを小さくすることで、感染リスクを小さくすることができます。そして、発生してしまったときの感染人数を減らすことにも繋がります。その意味では少なければ少ないほどいい。

ただ、それでは効率性が失われてしまいますね。やはり、どこで折り合いをつけるかだと思います。部屋の広さも考えながらですが、たとえば、この部屋であれば15人から20人ぐらいが適正なのかなと直感的には思います。

―― いくつかの学童を掛け持ちで働く人もいるが構わないか?

クラスターを小さくして、かつ独立性を保つことが大切です。その意味では、クラスター間を行き来する人はいない方がよいです。どうしても掛け持ちが必要な人材であれば仕方がないですが、症状がないかを確認して、手洗いを心がけるなど、とりわけ注意してほしいと思います。

―― 室内で卓球やバスケットボールをやってもよいか?

う~ん、あまり勧められません。というのも、新型コロナウイルスの感染に関して言えば、屋内の閉鎖された空間で大声を出したり、激しい呼吸をすることにより、エアロゾルといってウイルスを含む小さな飛沫を発生させた可能性が指摘されています。たとえば、ライブハウス、スポーツジム、宴会などですね。ですから、激しく体を動かすような遊びについては、できるだけ屋外でやらせた方がよいと思います。

―― 学童クラブと老人ホームが一体になっているところがあるが大丈夫か?
沖縄では多いですよね。子供たちとお年寄りとの交流は良いことなんですが、感染症にはリスクを伴うと言わざるを得ません。流行が収まるまでは、できるだけ子供たちとお年寄りの接点を減らした方が良いのではないかと思います。

老人ホームが繋がっているなら、ドアを閉めたり、衝立をしたりと、できるだけ子供たちと分離するようにしてください。これは家庭で子供たちが集まるときも同じで、高齢者のいる家では遊ばないようにしてほしいです。

結局のところ、子供たちの活動性を考えると新型コロナへの感染リスクはなくせません。全員が感染するとは言いませんが、ある程度は感染していくでしょう。しかし、不安に感じる必要はありません。おおむね軽症で終わります。
いまは封じ込めを狙っていますから、誰も感染しないための対策をとっています。でも、そこにしがみつくべきではありません。いずれ突破される可能性があり、そのときの最終防衛ラインを私たちは理解しておく必要があります。それは、高齢者と基礎疾患のある人たちを守るってことです。流行期に入っても、そこはしっかりやっていきましょう。
(引用ここまで)