院長です。昨日の午後は「小児科の先生とおはなししよう」の日でした。テーマは「母乳神話について考えよう」。今回参加くださったのはお二人でした。助産師を交えて授乳に関することを中心に、様々な事柄について一緒にお話しさせていただきました。おっぱいのトラブルで受診した助産院の指導が厳しく辛かったということや、ミルクだけで育てているお母さんと出会うことが少なく、何とはなしに周囲からのプレッシャーを感じていたことなど、それぞれの経験談を数多く語ってくださいました。そこには、診療の場では聞くことのできないことがたくさんあり、自分が普段接している世界が限られたものであることを実感しました。
母乳で育てることの大切さを周囲の人たちに伝えることは、医療者としての務めだと思っています。EBM(Evidence Based Medicine:証拠に基づく医療)全盛の現代においては、母乳育児支援もまた医学的根拠に基づいて行われるものでなければなりません。 しかし一方で、一つとして同じお産がないように、すべての親子に当てはまる共通した育児法というものはなく、正しいとか間違っているとか、そういう基準ですべてを判断してよいわけでもないのです。医学的にみて基準から大きく逸脱しない範囲で、それぞれのお母さん・赤ちゃんにあったやり方を考えつつ支援する、いくつかの選択肢を示して選んでもらいそれをサポートする、そのような姿勢がわれわれ医療者には求められるのだと思います。
母乳育児支援に積極的な人たちが、「母乳神話」「母乳教」というようなレッテルを張られ揶揄されることがあります。これは明らかに間違っていると思いますが、「育児支援」がいつの間にか「指導」になり、母乳栄養の確立が目的となり、その結果としてお母さんを追い詰める形となってしまっている状況にも原因があるのです。 今日、お母さんたちの体験談を聞いて、これまでの自分にも反省すべきところがあったなあと感じました。
主人公はあくまでも、お母さんと赤ちゃんです。支援する周りの人は、お母さんの立場に立って考えるのと同時に、必ず赤ちゃんの立場・視点にも立って考え、親子のこれからの歩みを見通した上で「今」に寄り添わなければならないと改めて思いました。
次回は11月18日(金)の予定です。テーマが決まりましたらお知らせします。 (2016.10.22.)