集団免疫について

 院長です。すこし時間が経ってしまいましたが、先日のおはなし会で触れた集団免疫のことについて述べたいと思います。
 ワクチンを接種する大切な目的は、①自分がかからないために、②もしかかっても症状が軽くてすむために、③まわりの人にうつさないために、の3つがあげられます。①②は「個人免疫」といわれるもので、皆さんもよくご存じのことと思います。しかしワクチンで免疫が十分つかない場合があることや、ごく一部ですが免疫不全という状態のためワクチンを接種できない人がいます。さらに生まれたての赤ちゃんも、時期がくるまでワクチン接種ができません。そこで大切なのが、③の「集団免疫」と呼ばれるものです。
 ワクチンを接種することで、集団内に免疫をもつ人が多くなれば、病気自体が流行しにくくなります。これが集団免疫と呼ばれるものです。病気が流行らなくなることで、予防接種しない人がいても、多くの人はその病気にかかりません。これにより、ワクチンを接種したけど十分免疫がつかなかった人や、接種したいけれど免疫不全等で接種できない方、ワクチンの接種時期前の赤ちゃんなどが病気から守られます。最大限に効果を発揮すれば、地球上からなくなってしまう病気もあります。実際に天然痘という死亡率30%もある病気は、ワクチンをしっかりと接種していくことで地球上からなくなりました。
 「自分の子供は、ワクチンを接種していないけど病気にかかっていない。だからワクチンは必要ない。」といってワクチンを接種しない方がおられます。しかし実際には、ワクチン接種を受けていない人も、ワクチンの恩恵・集団免疫の恩恵を受けているのです。さらに発症のリスクがワクチンを接種した人よりも高く発症した場合も症状がひどいため、多くの人にうつす危険性があります。自分を守ってくれていたワクチンを接種した他人を、危険にさらしてしまうことになるのです。ワクチンを接種しても免疫が十分つかない人や、ワクチンを接種できない赤ちゃんや、免疫不全の方の感染のリスクも上げてしまいます。
 このようにみてみるとワクチンを接種するのは自分のためでもあり、周りの人のためでもあるのです。集団免疫を高めるためにも、「できるだけ早く」「できるだけ多くの人が」予防接種を受けることが大切です。  (2016.4.3.)