院長です。アップが遅くなりました。先週の金曜日、2月26日におはなし会を開催しました。今回は「皮膚のトラブル」について。僕からは、生後早期からのスキンケアがアトピー性皮膚炎の予防につながるという研究結果について、スキンケアの基本、ステロイド軟膏について、身体の洗い方・保湿剤の違いと塗り方、などについてお話しました。その後は、お母さん方からの質問に答える形で、皮膚のトラブルに関するさまざまな疑問にお答えしていきました。皆さんから寄せられた質問で多かったのは、「スキンケアに関すること」「ステロイド軟膏の使い方、特に副作用について」「食物アレルギーとの関係について」というものでした。
これまでの診療の経験からは、「きれいに、そしてしっとりと」というスキンケアを生後早期の段階から開始していれば、ひどい湿疹ができることが圧倒的に少ないという印象をもっています。湿疹があってもなくても、日々のスキンケアは欠かせません。角質層がうすい赤ちゃんには、最低でも1日2回のスキンケアが必要です。それでも湿疹ができる場合、ステロイド軟膏が必要となる場合がでてきます。適切なスキンケアだけではコントロールできない乳児期の痒みをともなう湿疹の約半数に、食物アレルギーがみられます。食物アレルギーがある場合、皮膚を良好な状態に保つためには、原因となっている食物の適切な除去(必要以上の除去はかえって良くありません)とスキンケアの両輪が必要となります。
今回改めて感じたことの一つに、スキンケアに関する適切な情報が伝わっていない、ということがあります。これはスキンケアに限った事ではありませんが、インターネットで簡単に情報が手に入るという簡便さを手に入れた一方で、多くの情報の中で自分にとって必要な情報がどれなのか取捨選択することが難しくなっているだけではなく、逆にそれが混乱や悩みの原因にもなってしまっていると感じました。大切なことの一つに、お母さん(お父さん)に納得してもらった上で治療を行う、ということがあります。今回質問が多かったステロイド軟膏の使用を例にとると、必要な量を適切に使用しなければ、期待する効果は得られません。お母さんが不安を抱いたままではどうしても使用量が少なくなりがちで、結果として湿疹の改善が得られないばかりでなく、使用期間が長くなることでの副作用に対する不安が大きくなってしまいます。医師の側がステロイド軟膏を必要だと判断しても、まずはステロイド軟膏を使用しない方法を納得のいくまで試してみて、それからステロイド軟膏の使用について一緒に考える、ということは十分に可能です。情報に振り回されることの無いよう、まずは相談していただけたらと思います。1歳までのお子さんに対しては、長めの時間を取ってお話できるよう赤ちゃん外来を設けていますので、そちらもご利用ください。なお今回使用した資料については、希望される方にお渡しできますので、受付までお申し出ください。
3月のおはなし会は、18日(金)の予定です。詳しいことが決まりましたら、改めてお知らせします。(2016.3.1.)