院長です。
昨年末からインフルエンザが流行していますね。発熱を伴う風邪症状で受診されたときに、インフルエンザかどうかを診断するために抗原検査(鼻に綿棒を入れる痛いヤツですね)を行うことが一般的になっています。今回は、検査を行うタイミングについてお伝えしたいと思います。
この抗原検査は、ウイルスが持つ特有のタンパク質を検出する検査で、ウイルス量がある程度増えないとこのタンパク質を検出することはできません。インフルエンザウイルスは、特に鼻とのどの間の粘膜(上咽頭:この辺りを綿棒でこすって検体を採取しています)で増殖しますから、ここである程度ウイルスが増殖してから(ウイルス量が増えてから)検査を行わないと、インフルエンザウイルスに感染していても検査結果は「陰性」となってしまいます。ではインフルエンザの発症(あきらかな発熱、普段の風邪の時には無いような倦怠感や頭痛・関節痛など)から抗原検査で信頼できる検査結果が得られるまでの時間はどのくらいなのでしょうか。さまざまな資料を調べてみたところ、少なくとも発症から12時間以上経過してから検査を行うのが望ましいようです。ここで問題になるのは、発症をどの時点とするかです。特に真夜中に発症している場合などは、発症のタイミングの判断が難しくなります。当院では、問診により症状の詳しい経過を確認するとともに、診察時の状態や診察所見から、発症はいつぐらいと考えられるのか、インフルエンザの疑いがあるのかどうか、を判断してその場で抗原検査を行うかどうかを決めています。【最近導入したnodoca(昨年11月19日の「お知らせ」で紹介したものです)は、抗原検査よりも少し早い時期から判定可能とされています】
そもそも論となりますがインフルエンザの抗原検査は、診察の結果インフルエンザの疑いがあると考えるときに、インフルエンザかどうかを判別するために行うものです。発症からの時間がまだ短いと考えられる場合や、経過と診察所見からインフルエンザの可能性が低いと考えられる場合は、周りの流行状況に関わりなく検査を行わずに経過をみさせていただいています。実際に、インフルエンザウイルス以外が原因のかぜ症状で受診されている方も多いのです。
抗インフルエンザ薬の効果は、できるだけ早く診断して服薬を開始する方が、その効果は大きいとされています。しかし、インフルエンザではない患者さんに投与してしまうと、効果が無いばかりか副作用だけがあらわれる可能性もあります。したがってインフルエンザの抗原検査を行う場合は、痛みを伴う検査でもあるので、できる限り1回で済ませられるよう信頼できる結果が得られるタイミングで行い、インフルエンザと診断した場合に投薬を行うようにしています。
受診していただいたのに、検査は行わずに経過をみさせていただくことがあります。辛い思いをしているお子さんを目の前にしてご心配だと思いますが、インフルエンザの抗原検査を行うタイミングについてはこのように考えていますので、ご理解いただきたいと思います。
(2025.1.8)