Blog

ブログ

「赤ちゃんのあたまのかたち外来」開設にあたって

院長です。

5月28日に、「赤ちゃんのあたまのかたち外来」の開設についての情報を公開しました。赤ちゃんの頭のゆがみをヘルメットにより治療する外来です。

これまでのわたしの考え

わたしはもともとこのヘルメット治療の必要性については、懐疑的な立場でした。ヘルメットを数カ月にわたりほぼ一日中装着することが、赤ちゃんにとってほんとうに必要なことなのか疑問だったからです。

新生児科医として、長期間保育器に収容されていたために長頭となった赤ちゃんをたくさんみてきました。また、生まれたばかりの頃からの赤ちゃんを継続して診察する中で、頭のゆがみを生じた赤ちゃんも数多く経験してきました。頭の形について相談を受けたときには、「首がすわって寝返りができるようになれば、徐々に良くなってきますよ」とお伝えして様子を見ることにしていました。向き癖が強い場合には、ご自宅でのケアの方法をお伝えしていました。

あおむけ寝の推奨と頭のゆがみ

日本では伝統的にあお向け寝が主流でした。乳児の頭のゆがみやいわゆる絶壁は、ごく普通のことととらえる傾向にありました。一方でアメリカでは伝統的にうつぶせ寝が主流であったこともあり、日本でも1987年ごろから、うつぶせ寝育児が大流行しました。姿勢やプロポーションが良くなる、頭の形や顔立ちが立体的になる、発達が早く自立心が養われるなど、うつ伏せ寝は西欧の進んだ育児方法であると報道されました。その後、1992年にアメリカ小児科学会が、乳幼児突然死症候群(SIDS)の撲滅対策として「Back to Sleep Campaign」を行って、乳児をあお向け寝にするように推奨し、死亡率が激減したことから、日本でも同様の理由であお向け寝が推奨されるようになり、うつぶせ寝の流行も下火となりました。

アメリカでは、あお向け寝が主流となって以降、乳児の頭のゆがみ・変形が急増し、新たな問題となりました。頭の形を治療する方法としてさまざまな装具が開発され、1998年に初めてアメリカ食品医薬品局(FDA)に認可を受けた装具が誕生しました。その後、現在までに数多くの矯正ヘルメットあるいは矯正バンドがFDAから、医療機器としての認可を受けています。

日本でのヘルメット治療

日本では、2011年から矯正ヘルメットを用いた頭の形の治療の臨床研究が始まり、日本での効果と安全性が確認されました。2018年には、このヘルメットが頭のゆがみを治療するヘルメット療法用の装具として医療機器としての認可を受け、その後現在までに7品目のヘルメットが承認を取得しています。

当院でも取り組むことに

恥ずかしいことにわたしは最近まで、日本でヘルメット治療についての臨床研究が行われていて多くのデータが蓄積されていることを知りませんでした。この治療を行う上では頭部のCTやMRIでの評価が必要で、開業小児科医でヘルメット治療を行うことは難しいと考えていました。赤ちゃんの頭の形で相談を受けたときには、あたまの形外来を開設している病院などの情報を提供したり、紹介したりしていました。最近になってようやく情報を集め始め、先日の日本小児科学会で行われたセミナーで、既に研究や実際の治療の実績を重ねられている医師の講演を聴き、これは当院でも取り組まなければと考えるようになったのです。

長くなりましたので、今回はここまでにします。次回は、治療の前に大切な頭のゆがみの予防についてお伝えしたいと思います。

PageTop