離乳食の基本は家族の食事

院長です。今日は離乳食について少しふれてみたいと思います。

皆さんは、“補完食”という言葉をご存じでしょうか。日本では、授乳のみの時期から徐々に食べるということが進んでいく時期の食事を“離乳食”と呼んでいますが、他の多くの国々では、“補完食”と呼んでいるようです。母乳やミルクだけでは栄養が足りなくなってきた時期に不足した栄養を補うために食べる食事、という考え方からきています。日本でも徐々にこの考え方が浸透してきており、厚生労働省から保健医療従事者向けに出されている『授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)』においても、「離乳とは、成長に伴い、母乳又は育児用ミルク等の乳汁だけでは不足してくるエネルギーや栄養素を補完するために、乳汁から幼児食に移行する過程をいい、その時に与えられる食事を離乳食という」とされています。少なくともこの時期の食事は、授乳を徐々に止めていくための食事ではありません。わたしも開業医となった約20年前から、「離乳食は、授乳をやめていくための食事ではないですよ」「家族の普段の食事を分け与えましょう」「食事の時間に、一緒に食べるようにしましょう」といったことを一貫してお話ししてきました。

しかしながら、『授乳・離乳の支援ガイド』では今も、「離乳の開始とは、なめらかにすりつぶした状態の食物を初めて与えた時をいう」「離乳の開始は、おかゆ(米)から始める」「慣れてきたらじゃがいもや人参等の野菜、果物、さらに慣れたら豆腐や白身魚、固ゆでした卵黄など、種類を増やしていく」「離乳が進むにつれ、魚は白身魚から赤身魚、青皮魚へ、卵は卵黄から全卵へと進めていく」「食べやすく調理した脂肪の少ない肉類、豆類、各種野菜、海藻と種類を増やしていく。脂肪の多い肉類は少し遅らせる」と記載されています。しかし、このような進め方には、実は科学的な根拠はないんです。

ときどき、離乳食に関する相談を受けることがあります。よくあるのが「食べてくれない」という内容の相談です。このような相談を受けたとき、わたしは必ずお母さんに「お母さんが食べて、美味しいものでしたか?」と尋ねることにしています。ほとんどのお母さんは、「美味しくなかった」と答えられます。そう、食べてくれない原因の多くは「美味しくない」からなんです。少し味付けをしてもらったり、お母さんが食べている食事の一部を取り分けて与えてもらったりすると、よく食べるようになることをしばしば経験します。

離乳食と言っても、最終的には家族と同じものを一緒に食べるようになる、それまでの移行期に食べる食事です。その基本は、普段の家族の食事でよいのです。  (2022.1.10)