院長です。今日は母乳とお薬のお話。
授乳中のお母さんから時々、相談されることがあります。「薬を飲まないといけなくなり、先生から母乳を止めるように指導されたのですが・・・」というものです。
日本の医薬品添付文書の「授乳婦への投与」の欄に記載のある薬のうち、「投与中は授乳を中止させる」「授乳を避けさせる」と記載されている薬が約3/4を占め、残る約13%は「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にだけ投与する」と記載されているそうです。医師の多くもこれに従って説明してきたのが実情です。これでは薬を服用するお母さんのほとんどが授乳できないことになります。しかし、この添付文書の内容は科学的根拠に乏しく、今の時代にそぐわない点が指摘されています。
実は2007年3月厚生労働省が策定し保健医療関係者に通知された「授乳・離乳の支援ガイド」では、「薬の使用による母乳への影響については、科学的根拠に基づき判断の上、支援を行う。」とされており、添付文書に従うようにはなっていないのです。お母さんが薬を服用しても、その薬が母乳中に移行する量はごくわずかです。しかも、赤ちゃんに対して有害な影響を及ぼす薬はほとんどありませんから、抗がん剤などの特殊な薬を除きほとんどの薬は授乳中でも服用可能なのです。
ひとたび母乳をやめてしまうと、ホルモンの変化などにより母乳を再開することは困難になります。もしも薬の服用に伴って母乳を止めるよう説明を受けることがあれば、薬の名前がわかれば調べることができますので、まずはご相談ください。