当院の「母乳哺育の推進」

院長です。今日は母乳に関することについて。
 ありきたりの表現を借りれば、「当院は母乳哺育を推進」しています。しかし、あえてホームページなどで「母乳哺育の推進」という言葉は使っていません。我々の考えの根底にあるのは、「哺乳類であるヒトの母親が、我が子を自らの母乳で育てるのは当然の事である(お母さんも赤ちゃんも、それができる能力をちゃんと持っている)。」ということです。ちょっと大げさな話になってしまいますが、ヒトがこれまで歩んできた歴史の長さに比べれば、ミルクが誰にでも手に入り利用できるようになってからの時間の長さは極々短いものです。にもかかわらず、ヒトは絶滅することなくここまで来られているわけで、そう考えると、母乳で育てることは選択の対象(母乳で育てますか? ミルクにしますか? 両方にしますか?)ではないと思うのです。
 母乳で育てるために、という視点から考えると、それは産後からの支援だけではうまくいきません。妊娠・出産・その後の育児の期間、継続した支援が必要です。お母さんが妊娠中にご自身の体調管理を十分にできていなければ、お産の際にトラブルが起きる可能性は高くなります。たとえどんなに順調な妊娠経過でも、出産の際の傷や切開の痛みで産後しばらく思うように動けない場合もあります。母乳で育てたいという情熱が人一倍でも、喫煙していれば母乳の分泌量は減ってしまいます。産後にいくら母乳母乳といっても、妊娠中からの準備ができていなければ、うまくいくはずがないのです。陣痛を乗り越え、長時間の出産で体力を消耗してもなお、「この子と離れたくない」とお母さんが感じられるよう支援することが求められます。  
 お母さんが「ああ、この子を産んでよかった」と心から思えること、家族もその思いを共有し幸せを感じることができることは、とても大切なこと。そのためには、母乳で育てることがとても重要な意味を持っています。それを感じてもらいたいと思うのです。ミルクのみで育てた場合には感じることができないものがそこにはあり、「本当の意味での母乳育児支援」はその部分も含んでいます。
 母乳だけで育てられたかどうかだけが重要なことではありません。ミルクを足すことが必要な場面もあります。その時には我々が、自信を持って「ミルクをこれくらい足しなさい」と言えることも重要なんです。そのためには、我々が母乳哺育に関する医学的な知識を十分に持っていなければなりません。当院では小児科のスタッフも、助産院の助産師も、皆が母乳哺育に関する十分な知識と経験を持ち、妊娠中から育児の期間まで継続して支援できる体制でお待ちしています。母乳の事、おっぱいのトラブル、赤ちゃんの成長・発育のことなど、何か困ったことがあれば、遠慮なくご相談ください。
(助産院では分娩も扱っております。助産院でのお産を考えておられる方、ぜひ一度、ご連絡いただければと思います。)