1か月健診

 院長です。先週末はお休みをいただき、盛岡で行われた「日本新生児成育医学会」に参加してきました。久しぶりに全国学会で発表してきました。演題名は「小児科医による1か月健診が果たすべき役割」。ちょっと大げさな題名だったかもしれませんが、開業医の目から見てとても大切なことだと思い、発表することにしました。
 赤ちゃんの生後1か月の健診は、以前は産科医により行われていましたが、多くの総合病院では小児科医によって行われるようになっています。最近は産科診療所においても、常勤あるいは非常勤の小児科医によって1か月健診が行われる場合が多くなってきていています。赤ちゃんを診るのは本来小児科医の役割であり、その点では望ましい方向に変わってきていると言えますが、小児科医による1か月健診をきっかけに、母乳育児に自信を失ったり、育児不安に陥ったりして、相談に訪れる母子をしばしば経験しています。
 母乳育児に関して言えば、出産前の9割以上のお母さんが母乳で育てることを望んでいることから、小児科医が母乳育児支援に関する十分な知識を持って健診に臨むことは必要最低限のことと思いますが、母乳育児に対する見解の相違を超えた、間違った「指導」「指示」が見受けられます。私が修正を試みても、1か月健診での何気ない「一言」が尾を引き、そこから逃れられずにいるお母さんもおられます。お母さんが自信を取り戻し、わが子と素直に向き合えるまでに、かなりの時間を要しているのが実情です。
 今回の発表では、1か月健診における小児科医の役割を、以下のようにまとめてみました。
 •赤ちゃんの発達・発育の確認と、異常の発見
 •お母さんの心身の健康状態にも配慮すること
 •母乳育児に関する十分な情報を持ち、お母さんの希望に沿いつつ、助産師とも協力しながら支援すること
 •お母さんと赤ちゃんとの関係が育まれ安定しているかどうか確認すること
 •個別性を重視し、多視点から見ることを心がけ、常に支援者としての立場を忘れないこと

 最後に、あるお母さんから頂いたメッセージを、皆さんにも知っていただきたいと思います。
「1か月健診は、赤ちゃんも1か月、そしてお母さんも母親になってまだ1か月です。
1か月の赤ちゃんが順調かどうか、同時に1か月の母親が心身ともに順調かどうかも診てあげてください。生後1か月はなかなか出掛けられません。ようやく出かけた先である健診はぜひ相談できる場所でもあってほしいです。」
私もこのお母さんの思いを忘れずに、健診に臨まねばと思います。 (2015.11.1.)