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これまでの歩みを振り返る その6 開院から現在まで
院長です。
いつもこのブログをお読みくださり、ありがとうございます。
産婦人科医との協働開業は、ちょうど10年で解消することとなりました。そのときのわたしは、当然のように、新たな場所で小児科クリニックを開業することを考えていました。
開業以来、ずっと支えてくれていた小児科の先輩や、協力してくれていた後輩たちにも、新しい道へ進むことを一人ひとり伝えました。みんな理解を示してくれました。
ところが、そのとき複数の後輩から、思いがけない言葉をかけられました。
「先生、本当にお産から離れてもいいんですか?」
わたしにとっては、まったく予想していなかった問いかけでした。
しかし今振り返ってみると、この言葉が、改めて自分が本当にやりたいことを考えるきっかけを与えてくれたのだと思います。
「開業小児科医として、これまでと同じようにお産に関わり続ける方法はないだろうか」、そう考え始めました。
前回お話ししたように、わたしのなかにはすでに、「一人の助産師が、妊娠中から産後まで継続して関わる」という、お産の理想のかたちが生まれていました。
できることなら、それを実現したい。
そこで頭に浮かんだのが、「今度は、小児科クリニックに助産院を併設できないだろうか」という考えでした。さまざまな角度から調べてみると、制度上、それが可能であることが分かりました。
しかし、この構想を実現するためには、一緒に開業してくれる助産師が必要です。
そこで、同じクリニックで一緒に働いていた一人の助産師に、わたしの考えを伝えることにしました。
彼女には、以前から一つの基本的な考えがありました。「小児科医のいる施設でなければ、お産は扱えない」というものです。生まれた赤ちゃんの状態が悪かったときに備えて、小児科医によるバックアップ体制が必要だという考えでした。
それまでにも、わたしたちは何度も、お産のあり方や、自分たちが理想とするお産について話し合っていました。
わたしの考えを伝えたあと、彼女はじっくりと考え、そして開業助産師になることを決断してくれました。現在の悠育助産院の谷口助産師です。
こうして、くわはらこどもクリニック・悠育助産院は、2012年10月に開院しました。
開院から、間もなく14年になります。山あり谷ありの14年でしたが、何とかここまで歩んでくることができました。もちろん、すべてが思い描いていた通りに進んだわけではありません。それでも、小児科クリニックと助産院が一つの場所にあり、赤ちゃんが生まれる前から、生まれたあと、そして成長していく過程までを見守っていく。他にはない施設として、少しずつ、自分たちが目指してきたかたちに近づいているように感じています。
少子化が進み、小児科にとっても、助産院にとっても、決して容易な状況ではありません。そのようななか、今年に入って悠育助産院でお産をされる方が増えてきたことは、わたしたちにとって大きな励みとなっています。
【このシリーズの終わりに】
2014年、日本小児科学会は、小児科専門医を「子どもの総合医」と位置づけ、その役割は、成育医療を含む広範囲な領域に及ぶとしています。
「子どもたち一人ひとりを包括的にとらえた医療、保健を実践している日本小児科学会は、
1)小児科専門医は『子どもの総合医』であること、その領域は、成育医療*も含め広範囲であると考えます。
2)子どもたちの生活の『質』と『安全・安心』を確立する観点から、日本の総合医体制の充実を図ります。
また、『子どもの総合医』としてのさらなる能力向上のため、今まで以上の研修・生涯教育システムを構築します。
小児科専門医は『子どもの総合医』として、子どもたちの生活の質と安全・安心のために活動していきます。」
*成育医療とは、胎児期から小児、思春期を経て次世代を育成する成人期までの過程で生じるさまざまな健康問題を包括的に捉え、それに適切に対応する医療を指します。
この考え方は、現在の日本小児科学会にも引き継がれています。現在も『成長・発達』という視点から、『胎児・出生から次世代まで』を見据えることが、小児科専門医の役割として示されています。
振り返ってみると、わたしがこれまで歩んできた道も、この「成育医療」という考え方につながっているように感じます。
産婦人科医との協働開業で数多くのお産に立ち会ったこと
そこで助産師の役割の大切さを知ったこと
そして、小児科クリニックに助産院を併設するという、今のかたちにたどり着いたこと
最初から、すべてを思い描いていたわけではありません。その時々で出会った人たちから多くのことを教えてもらい、考え、選択しながら歩んできた結果が、今につながっています。
これからも当院は、併設する悠育助産院とともに、胎児期から乳幼児期、学童期、思春期、そして成人期へと続いていく子どもたちと、そのご家族を継続して支える施設でありたいと考えています。
わたし自身も、地元精華町で診療を続ける小児科専門医として、その責任の重さを感じています。これからも学び続け、研鑽を重ねながら、地域の子どもたちとご家族のために、自分にできることを続けていきたいと思います。
「これまでの歩みを振り返る」は、今回で最終回となります。長いシリーズ、そして今回も長い文章となりましたが、最後までお読みくださり、本当にありがとうございました。
【出典】
公益社団法人 日本小児科学会「小児科医は子どもの総合医です」(平成26年2月16日)
(https://www.jpeds.or.jp/about/40014.html?utm_source=chatgpt.com)