先日の「小児科の先生とおはなししよう」:熱中症対策

 院長です。今日は熱中症対策について述べたと思います。
 先日、日本救急医学会から、熱中症対策として、以下のような提言が出されました。

【4 つの提言】
① 暑さ指数を意識した生活を心がけ、運動や作業中止の適切な判断を!
② 水分をこまめに取ること。おかしいなと思ったらすぐ涼しい場所に誘導を!
③ 適切な重症度判断と応急処置を。見守りつつ改善がなければすぐ医療機関へ!
④ 周囲にいるもの同士が、お互いに注意をし合う!

 まず、暑さ指数について簡単に解説します。暑さ指数(WBGT:湿球黒球温度)とは、人間の熱バランスに影響の大きい気温・湿度・輻射熱(ふくしゃねつ:地面や建物・体から出る熱で、温度が高い物からはたくさん出ます)の3つを取り入れた温度の指標です。熱中症の危険度を判断する数値として、環境省では平成18年から情報提供しています。その内訳は気温:湿度:輻射熱が 1:7:2 で、湿度が最も大きな要素となっているということを知っていただきたいと思います。これは、湿度が高い場所では汗が蒸発しにくく、体から熱を発散させにくくなるためです。
 
 上記4つの提言にあるように、適切な対応をとることができれば、熱中症は十分に予防できるものです。

 子どもは大人より大きな「体表面積(熱放散するところ)/体重(熱産生するところ)」比を有することから、熱しやすく冷めやすい体格特性を持ってい ます。気温が皮膚温より低い場合には、この皮膚血流量の増加と冷めやすい体格特性とがあいまって、深部体温を 若年成人とほぼ同様に調節することができます。しかし、汗が唯一の熱放散手段となる環境温が皮膚温より高 い条件や輻射熱の大きな条件(夏季の炎天下)では、熱しやすい体格特性が熱獲得を促進するとともに、未発達な発汗能力が大きく影響し、子どもの深部体温は大人より大きく上昇し、熱中症のリスクが急増します。このような子どもの特徴を理解して、早め早めの対応をすることが必要です。
 水分補給に関する注意点としては、「水だけ補給を行わないこと」です。汗をかくと、水分と同時に電解質も失われます。そこに、水やお茶だけで水分補給を行うと、体の電解質が更に薄まってしまいます。体は尿量を増やすことで、電解質の濃度を保とうとするので、結果的に脱水症状が悪化することになってしまいます。水分補給の手段としては、オーエスワンやアクアライトORSなどの経口補水液が理想的です。自宅で作る場合は、砂糖40g(上白糖大さじ4と1/2杯)と食塩3g(小さじ1/2杯)を湯冷まし1リットルによく溶かしたものを利用してください。果汁(レモンやグレープフルーツなど)を少量加えると飲みやすくなります。牛乳による補水も、脱水時には有効とされています。これらの経口補水液は、塩分濃度がやや高めですので、子どもが嫌がる場合があります。次善の策としては、おかゆや重湯に梅干しを加えたもの、スイカに食塩をかけたもの、などが考えられます。いわゆるスポーツドリンクは塩分濃度が低く、大量に取ると逆に軽度の脱水症状が出現する場合があり、注意が必要です。

 以上、熱中症対策について、水分補給を中心に解説させていただきました。まだまだ酷暑は続きそうですね。熱中症は、確かな情報を知ったうえで対処できれば、確実に予防できるものです。逆に少しでも油断すると、今年は大人でも容易に熱中症に陥る可能性があります。十分に注意して、楽しく夏休みを過ごしてください。
(以下に参考となる図表を掲載しますので、ご覧ください。さらに詳しい情報は、「環境省 熱中症予防情報サイト(www.wbgt.env.go.jp)」ご覧ください。)  (2018.8.2.)