院長です。
授乳相談で医療機関を訪れたお母さんが、相談相手の医療従事者から「この子はおっぱいの飲み方が下手ですね」って言われたら、お母さんはどう感じられるでしょうか。
そもそも私は、飲み方が下手な赤ちゃんなんていないと思っています。私自身は出会ったことがないし、一緒に働いている助産師や看護師からそのような言葉を聞いたことがありません。
それぞれの赤ちゃんの性格が違うように、授乳の仕方もさまざまです。力強くずっと吸い続ける赤ちゃんもいれば、起こさないと飲んでくれない、授乳を始めてもすぐに眠ってしまう赤ちゃんもいます。自然に問題なく母乳育児が進む場合もあれば、その子に合わせた工夫が必要な赤ちゃんもいるし、軌道に乗るまで私たち医療従事者の支援が必要なお母さんと赤ちゃんもおられます。母乳育児を支援する上での基本的なことを押さえつつ、目の前のお母さんと赤ちゃんに合わせた支援をするのが、私たちの役割だと思うんです。
授乳が上手くいかないことを、もの言わぬ赤ちゃんのせいにするのは、お母さんを励まそうと考えて発した一言だとしても、あってはならないことだと思います。赤ちゃん本人にも聞こえているのでは、と思うのです。
私たちの何気ないひとことで、育児不安に陥ってしまうお母さんがおられます。これまでの自分の行いを省みつつ、そう思います。産後うつの問題は、このような視点からの対策も考えなければならないのではないかと思っています。 （2020.12.18）