院長です。今日の午後、「小児科の先生とおはなししよう」を開催しました。今回は「受動喫煙の影響:加熱式たばこを中心に」というテーマでした。
これまでの紙巻きたばこの喫煙による健康被害については医学的にも証明されており、2020年4月に施行される新たな受動喫煙防止法が成立したところです。この法律のなかで加熱式たばこ(商品名:アイコス、グロー、プルーム・テックなど)は、「たばこのうち、当該たばこから発生した煙が他人の健康を損なうおそれがあることが明らかでないたばことして厚生労働大臣が指定するもの。」として扱われています。これは加熱式たばこが使用されるようになって数年した経過していないため、健康に対する長期的な影響がまだ分からないためです。しかし、加熱式たばこから生じるエアロゾル内に含まれる有害物質は紙巻きたばこと共通しており、有害であることは明らかです。そして世界で販売されている加熱式たばこの9割は、日本で消費されているという事実があります。
確かに紙巻きたばこから生じる煙の中に含まれる有害物質に比べると、その量は低減されています。しかし加熱式たばこの場合、ニコチンをはじめとする有害物質はエアロゾル(液体微小粒子)内に存在しますから、血流内に入る量が相対的に大きくなるというデータもあり、決して害が小さくなったわけではありません。そして、空気中に浮遊する時間が非常に短いので、換気により除去されることなく、衣服だけでなく周囲の壁や床に沈着しやすいとされています。最近はこのような形で沈着したニコチンが再放出されることによる三次喫煙の害が問題となっています。
室内表面に沈着したニコチンは除去し難く、酸性洗剤(通常の洗剤はアルカリ性)が必要であり、カーペットに付着したニコチンはほぼ除去不可能とされています。乳幼児は室内で過ごす時間が長く、ニコチンが沈着・蓄積した衣類やカーペットの近距離で過ごすことになるので、大人以上に三次喫煙にさらされることになるのです。
子どもたちのためにも、加熱式たばこに関するこれまでの認識を捨てて、正しい情報を基に確実な受動喫煙対策を今から講じなければなりません。受動喫煙による害を無くすためには、禁煙しかないのです。 (2019.1.25.)