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予防接種感染症赤ちゃん
RSウイルス感染症の予防策
こんにちは。くわはらこどもクリニックです。
前回のエントリーでは、RSウイルス感染症について改めてまとめてみました。今回は、その中で触れた予防方法について、ワクチン開発までの経緯、抗体製剤との違い、そして最新の予防策についてまとめてみたいと思います。
ワクチン開発における過去の苦い経験:ワクチンで逆に重症化した?
RSウイルスのワクチン開発が数十年もの間、足踏みしてしまった最大の理由は、1960年代に起きた悲しい出来事にあります。
当時、赤ちゃんを対象に試作されたワクチンを接種したところ、「ワクチンを打った子の方が、実際にウイルスにかかった時に重症化してしまう」という予想外の事態(VAERD:ワクチン誘導性増強呼吸器疾患)が起きてしまいました。

「良かれと思って打ったワクチンが、かえって病気を悪化させる」というこの現象がトラウマとなり、研究者たちは極めて慎重にならざるを得なかったのです。
赤ちゃんの「免疫」ならではの難しさ
RSウイルスが最も怖いのは、生後6か月未満の小さなお子さんです。しかし、この時期の赤ちゃんへのワクチン接種には3つの壁がありました。

- 免疫がまだ未熟: 体が小さく、ワクチンに反応して抗体を作る力がまだ弱い。
- お母さんからの抗体: 生まれた時にお母さんからもらった抗体が、ワクチンの邪魔をしてしまうことがある。
- 何度もかかる性質: RSウイルス自体が、一度かかっても一生ものの免疫がつきにくく、何度も感染を繰り返す厄介な性質を持っています。
科学の進歩で「正解」が見つかった!
長年の研究の結果、ついに突破口が見つかりました。ウイルスの表面にある「Fタンパク」という部分を、感染前の「正しい形」で認識できるようになりました。ここ標的にすることで、過去の失敗を避けつつ、ウイルスをしっかりやっつける強力な抗体を作れるようになりました。
現在の「新しい守り方」
こうした科学の進歩により、現在は「赤ちゃんに直接ワクチンを打つ」以外の、より安全で効果的な方法が登場しています。

抗体製剤は従来、ハイリスクな乳幼児(早産児、先天性心疾患、慢性肺疾患、免疫不全症、ダウン症候群)を対象に投与されてきました(健康保険と乳幼児医療費助成の対象)。新しい抗体製剤(ベイフォータス)は、上記の疾患に加え、全ての12か月未満の乳児が対象となりましたが、基本的には費用は自己負担(5万円から10万円程度)となります。
まとめ:これからは「予防できる」時代へ
RSウイルスワクチンが長く実用化されなかったのは、「赤ちゃんの安全を第一に考え、慎重に研究が進められてきたから」だと言えます。
現在は、お母さんを通じた免疫や、最新の抗体製剤によって、赤ちゃんを安全に守る環境が整いつつあります。次のエントリーでは、今年4月から定期接種となる「母子免疫ワクチン」についてお伝えしたいと思います。