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10月の「おはなし会」のご報告:離乳食について

院長です。

 しばらくブログの更新ができていませんでした。今年のうちに1度は、と考えているうちに今日、大晦日になってしまいました。申し訳ありません。
 今年の最後に、10月のおはなし会の内容についてお伝えしたいと思います。テーマは「授乳と離乳食Q&A」でした。会でお伝えした離乳食の考え方については、昨年3月20日と30日にアップしたブログの内容と基本的には同じなので、そちらをお読みいただきたいと思います。今回は、離乳食の大切さについて、最近発表された論文の内容を基にお話したことを記したいと思います。

日本における離乳食・補完食指導の現状

 今年の10月の日本小児科学会誌に「日本における離乳食・補完食指導の現状」という論文が掲載されました(日本小児科学会雑誌 129巻10号 1266~1275:2025)。内容を要約すると、以下のようになります。

背景・目的
 日本の離乳食指導は、厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド(2019)」に基づいて行われているが、その内容は世界保健機関(WHO)、米国小児科学会(AAP)、欧州小児消化器肝臓栄養学会(ESPGHAN) など国際的ガイドラインと大きく異なる点が指摘されている。本研究は、全国自治体における離乳食・補完食指導の実態を明らかにし、国際的推奨との比較を通じて日本の指導の課題を検討することを目的とした 。

方法
 2023年6~7月に、全国1,939自治体を対象としてアンケート調査を実施し、699自治体(回答率40.1%、人口30万人以上の自治体では63.6%)から回答を得た。離乳食の開始時期・内容・進め方、フォローアップミルクの扱い、アレルギー指導、母乳・ミルク終了時期などを解析した 。

主な結果

  • 離乳食開始時期
     ・81.4%の自治体が「生後5~6か月開始」と指導しており、開始時期自体は国際指針と大きな乖離はなかった。
  • 開始時の内容・栄養価
     ・91.1%が「10倍粥」で開始を指導。
     ・10倍粥は母乳・乳児用ミルクに比べエネルギー量が著しく低く、国際的推奨より栄養価が低い開始となっていた。
  • 離乳食の進め方
     ・91.7%が「お粥→野菜→たんぱく質」の順で導入するよう指導。
     ・この進行の遅さにより、離乳初期に必要なエネルギー・たんぱく質摂取が不足する可能性が示唆された。
  • フォローアップミルク
     ・16.7%の自治体で鉄補充目的に使用、9~10か月で切り替えを勧める自治体も存在。
     ・一方、「医学的に不要」と指導している自治体は1割未満であった。
  • 母乳・ミルクの終了指導
     ・約46%の自治体が、1歳半時点で母乳・ミルクをやめる方向で指導。
     ・「母乳はいつまで続けてもよい」とする自治体は9.9%にとどまった。
  • 成長曲線との関連
     ・日本の成長曲線は、WHO基準と比べて生後6か月~3歳の身長・体重・BMIが低く、離乳期の栄養不足が一因である可能性が示された。

結論・提言
 日本の離乳食指導は、

  • 開始時の栄養価が低い
  • 進行が緩やか
  • 母乳・ミルクの中止が早い

という特徴を持ち、国際的推奨と比べて 離乳期の栄養摂取量が不足している可能性 が高い。これが乳幼児期の成長に影響している可能性も否定できない。

著者らは、

  • 厚生労働省ガイドを医学的根拠に基づきアップデートすること
  • 10倍粥開始など根拠の乏しい慣習的指導の是正
  • 離乳初期から十分な栄養が確保できる指導内容への転換
  • 母乳は母子が望む限り2歳以上まで継続可能であることの明記

が必要であると結論づけている 。

1st 1000 days(ファースト・サウザンド・デイズ)

 皆さんは、「1st 1000 days(ファースト・サウザンド・デイズ)」ご存知でしょうか。妊娠期から生後2歳(約1000日間)までの期間を指す言葉で、この時期は、子供の成長と発達にとって最も重要な時期とされ、世界保健機関(WHO)やユニセフ(UNICEF)などがその重視性を提唱しています。この期間が重要とされる理由のなかには、以下のようなことがあげられています。

脳の発達の基礎:脳の構造と機能の80%がこの1000日で形成される。
・健康の土台:栄養状態や環境が、その後の慢性疾患リスクや学習能力の基礎を決定する。

つまり、生後に限って言えば、授乳期・離乳期の栄養が非常に重要であるという事です。

日本の離乳食をより良いものに

 話を戻すと、この論文が指摘している日本の離乳食に関する問題点は、わたしがこれまで一貫して指摘してきたこととほぼ同じです。非常に重要な「1st 1000 days」における子供たちの成長のことを考えれば、この論文の著者が提言しているように、出来る限り早く日本の離乳食のガイドライン等のアップデートが必要だと思います。

 最後に、おはなし会でのまとめを、少し説明を加えてお示しします。

  • 家族で一緒に食べる:1日3回から始める
      最初から、一緒に食卓を囲み、一緒に食べる機会を設ける。
  • 食べる量は、赤ちゃんが決める
      一度に食べる量は、赤ちゃん任せでよい。当初はムラがあるもの。欲しがらなければスキップして構わない。
  • 家族の食事から取り分ける
      わざわざ別に作るのではなく、家族の食事をつくる過程で、使える食材を取り出して、月齢に合わせて仕上げればよい。食べなければ、親が食べてしまえば無駄も無い。
  • 「不味い」と感じるものは食べさせない
      親が食べてみて不味いと感じるものは、赤ちゃんにとっても不味いもの。
  • まず両親や家族の食習慣を見直す機会
      「とりわけ離乳食」にすることで、家族の食習慣を見直す機会にもなる。1年もすれば同じものを食べるのですから。
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