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「子ザルのパンチくん」をみて思い出したこと

院長です。

 皆さんは、「子ザルのパンチくん」をご存知でしょうか。わたしが知っているくらいなので、テレビのニュースやSNSなどでご存知の方が多いのではないかと思います。

 パンチくんは、昨年7月に千葉県の動物園で生まれたオスのニホンザルです。母ザルが育児放棄したため飼育員が人工哺育で育て、母親がわりのオランウータンのぬいぐるみを抱えて過ごす姿が話題となっています。わたしは、パンチくんの姿を見て、ある古い実験のことを思い出していました。

ハーロウの実験

 米国の心理学者ハリー・ハーロウ(Harry Harlow)が1950年代から60年代にかけて行った実験です。当時は「子供が母親に懐くのは、ミルク(空腹を満たす報酬)をくれるからだ」という考えが主流でしたが、ハーロウはアカゲザルを用いた実験でこれを覆しました。

 ハーロウは、生まれたばかりの赤ちゃんザルを母親から引き離し、2種類の「代理母」の人形がいるケージに入れました。

  1. 針金の母(Wire Mother): 冷たい針金で作られているが、哺乳瓶が付いており、ミルクを飲むことができる。
  2. 布の母(Cloth Mother): 柔らかいスポンジと布で覆われているが、ミルクは出ない。

 結果は、以下のようなものとなりました。

恐怖への反応: 大きな音を立てる怪物のようなおもちゃでサルを驚かせると、サルは一目散に「布の母」にしがみつき、安心を得ようとしました。

接触の心地よさ: 赤ちゃんザルは、ミルクを飲む一瞬だけ針金の母のところへ行きますが、それ以外のほとんどの時間(1日22時間近く)を「布の母」と一緒に過ごしました。

 

この実験により、乳幼児の発達において「栄養供給」よりも「肌の触れ合い(接触の心地よさ)」や「安心感」の方が、愛着形成に決定的な役割を果たすことが証明されました。この結果は、その後の愛着理論の発展に大きな影響を与えました。

がんばれパンチ

 温かい接触が奪われて育ったサルは、集団生活に馴染めなかったり、自分の子供を育てるのが困難になったりすることも分かっています。

 ニホンザルは群れで暮らす動物のため、飼育員の方たちの目標は、最終的にパンチくんを群れに戻すことだそうです。現在は徐々に群れに馴染んできているようで、ぬいぐるみと離れて過ごす時間も増えているようです。それでも眠るときは、ぬいぐるみを抱えているとのこと。肌のふれあいとそこから得られる安心感が、子供の成長にとても重要なんだなぁ、とあらためて感じました。

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