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妊娠中のアセトアミノフェン服用と自閉症
院長です。
デジタルメディアに関する投稿の連載中ですが、今回は、先日報道された事柄に関してお伝えしたいと思います。その報道とは、『アメリカのトランプ政権は、鎮痛解熱剤の有効成分「アセトアミノフェン」を妊婦が服用すると、子どもの自閉症のリスクを高めるおそれがあると主張して、必要な場合を除いて服用を控えるよう求めました。(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250923/k10014930191000.html)』というものです。記事にあるように、アメリカ産婦人科学会、アメリカ精神医学会は、反対声明を出しています。
アセトアミノフェンについて
アセトアミノフェン(有名な商品名としては「カロナール」)は、解熱鎮痛薬のスタンダードであり、小児においても第一選択の薬剤です。妊婦さんにおいても、他の解熱鎮痛薬に比べて安全性が高いと考えられており、小児と同様、第一選択の薬剤という位置づけになっています。
自閉症スペクトラム障害(ASD)
自閉症スペクトラム障害(ASD)は、社会的なコミュニケーションや対人関係の困難さ、興味や行動の偏り(こだわり)を特徴とする神経発達症のひとつです。その原因は複雑で、遺伝的な要因が強くかかわっていることが分かっています。
アセトアミノフェンの服用とASD
さて、アセトアミノフェン服用とASDとの関係ですが、理解を助けるために、宮坂昌行先生のフェイスブックへの投稿を参考に、解説したいと思います。
2010年代のいくつかの『観察研究』で、妊娠中にアセトアミノフェンを使った母親から生まれた子は、使わなかった子に比べて、ASDやADHD(注意欠如・多動症)と診断される確率がすこし高い、という報告が相次ぎました。これらの研究は、薬を使ったグループと使わなかったグループの結果を単純に比較したものでした。考えてみると、薬を服用するのには、その原因があるはず。アセトアミノフェンであれば、たとえば感染症による発熱などが考えられますが、そうであれば、その感染症や発熱したことが、おなかの赤ちゃんの脳の発達に何らかの影響を与えた可能性が考えられます。また、遺伝的な要因が関与している可能性もあります。つまり、アセトアミノフェンの服用とASD発症との間に関係性があるのかどうかを判断するためには、母親の病状と、母親自身の遺伝的な背景(この二つが、今回の研究における交絡因子)の影響を排除する必要があるのです。
そこで、スウェーデンの研究者たちが行ったのが「兄弟姉妹内比較研究」です。同じ母親から生まれた兄弟、姉妹で、一人は妊娠中にアセトアミノフェンを服用したけれど、もう一人の時は服用しなかった、というケースを集めて分析するというものです。これにより、遺伝的に極めて近く、家庭環境もほぼ同じという条件の下で、アセトアミノフェンを服用した場合と、服用しなかった場合を比較したのです。この研究では、約250万人が対象となっています。結果は、妊娠中のアセトアミノフェンの服用と、ASD・ADHD・知的障害の発症との間に関連は認められない、というものでした。つまり『妊娠中のアセトアミノフェンの服用と子どもの発達障害に直接的な因果関係はない』ということです。
結論
したがって、『アセトアミノフェンは妊娠中に使用可能な第一選択の解熱鎮痛薬』ということに今後も変わりは無く、『必要な時に、必要最小限の量・期間で使う』ということが大切です、ということになります。
今回の内容について、不明な点や不安なことがありましたら、遠慮なくご相談ください。