小児科院長です。
今日の午後、3回目の「小児科の先生とおはなししよう」を開催しました。私の不手際でお知らせするのが遅れたことと、かなり寒くなってきたこともあり、参加されたのはお二人でした。前回までに比べればちょっと寂しい気がしましたが、これまでと変わりなくおはなしさせていただきました。
はじめに私の方から「カンガルーケアの実際」と題して、お話ししました。ここで言う「カンガルーケア」とは、満期で元気に生まれた赤ちゃんを、生まれた直後から裸のままで、横になっているお母さんの素肌に胸と胸を合わせるように抱っこして過ごしてもらうことを指しています。未熟児で行うカンガルーケアと区別する必要があることから、最近では「早期母子接触(early skin to skin contact:以下STS)」と呼ばれています。STSについては、STS中の事故(赤ちゃんの状態急変や死亡)の報告があることから、非常に危険な行為であるかのような報道が、これまでも何度かありました。今回週刊誌において、3週にわたり(今後も継続されるようですが)「カンガルーケア」「完全母乳(定義が曖昧で、あえてこの言葉を選んだと思われるのですが)」が危険であるとのキャンペーン記事が掲載されたので、本当のところをお話ししたいと思い、このテーマとさせていただきました。まず、日本でSTSが行われ始めた経緯や、定められている実施基準、STS実施中の急変事例のデータなどについて説明し、その上で、生後早期のお母さんと赤ちゃんの本来の状態、お産との関係などについて、私自身の経験も踏まえてお話ししました。お二人のお母さんもご自身の経験をお話ししてくださり、結局1時間を費やすこととなりました。その後、ご質問のあった冬場のスキンケアについて、赤ちゃんの発達や事故(頭部打撲への対応など)について説明させていただき、あっという間に1時間半が過ぎてしまいました。
STSは、母乳育児をすすめる上ではもちろんの事、お母さんと赤ちゃんの関係を築いていく上での第一歩であり、とても大切な行為です。考えてみれば、お母さんがわが子を抱くということは、本来自然な行為であり、それが当たり前のこととしてできるよう我々は考え努力する必要があります。お産の時の安全だけではなく、親子の将来も考えた上で対応しなければなりません。もちろん当助産院でも行っています。もし、これまでの報道や今回の記事を読んで不安や疑問を抱いている方がおられましたら、小児科・助産院どちらでも構いません。遠慮なくお問い合わせください。 (2014.11.14.)