自然の摂理

院長です。今朝、以下のような記事を見つけました。

卵子の若返り:「染色体置き換え」で可能に 高齢出産に光:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131212-00000005-mai-sctch】
<独立行政法人「医薬基盤研究所」などの研究チームが、ヒトの卵子から染色体だけ取り出して、別の卵子の染色体と置き換え、体外受精技術によって受精させることに成功した。この技術を応用すると、高齢女性の卵子の染色体を、染色体を抜き取った別の若い女性の卵子に入れる「卵子の若返り」が可能になる。若返った卵子でできた受精卵を子宮に戻せば、高齢女性も妊娠できる可能性が高まる。>

とても驚きました。卵子の凍結保存を通り越して、技術の進歩がここまで来ているのかと。医療技術の進歩は喜ばしいことであり、私も含め多くの人がその恩恵を受けていることは紛れもない事実です。その一方で延命治療と尊厳死といった新たな課題にも直面し、そのひとつひとつを我々は乗り越えてきました。そしてこれからも、乗り越えていかなくてはならないのだろうと思います。でも…。
たった一つの受精卵、そこから我々の命の営みが始まります。父と母から受け継いだ遺伝情報に従って、たった一つの細胞から新たな命が生まれます。陣痛が始まり、狭い産道をくぐり抜け、出産の時を迎えます。その過程は、すべてが医学的に解明されているわけではなく、お産に立ち会うたびに自然の摂理の大きさを感じるのです。そこはまさしく「生命の神秘」と言えるものであり、そういうところに魅せられて私は医学の道を志しました。この報告に接して感じるのは、ここまで私たちが踏み込んでよいのか、という漠然とした不安です。「神様の領域」と言えばあまりに非科学的ではありますが、そういうものの存在もまた認めるべきではないかと思うのです。