新型コロナウイルス:変異株と若年者の感染

院長です。数日前に、新型コロナウイルス感染症による20代の男性の方が亡くなったとの報道がありました。年齢が若く基礎疾患が無かったということもあり、報道でも大きく取り上げられていました。

現時点で、新型コロナウイルス感染症の重症化のリスク因子として明らかなものは、下記のとおりです。
・65 歳以上の高齢者
・悪性腫瘍
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
・慢性腎臓病
・2型糖尿病
・高血圧
・脂質異常症
・肥満(BMI 30 以上)
・喫煙
・固形臓器移植後の免疫不全
これら以外にも、女性より男性のほうが重症化リスクが高いことも分かっています。今回亡くなった方が、このような疾患で治療を受けていた事実はなかったのだろうと思いますが、肥満や喫煙については明らかではないようです。同じ日に神戸市でも20代の方が亡くなったことが発表されていますが、その方には基礎疾患があったそうです。このように若い世代にも重症化する人や亡くなる人が増えており、原因としていわゆる変異株の影響ではないかという指摘もありますが、現時点でそのような判断は時期尚早だろうと思います。

下のグラフは、5月12日に開かれた「第34回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」の資料から引用したものです。

新型コロナウイルスの変異株の特徴として、感染性が高くなっていることや重症度が増していることが指摘されており、若い人たちの感染者や重症者が増えてきている印象を抱かれている方が多いのではないでしょうか。しかし、少なくともこのデータからは、実数として20~30代の新規重症者数は増えていますが、全体に占める割合はほとんど変わっておらず、特に20代は2%以下であることに変わりはありません。

変異株の流行がどのような変化をもたらすのかは、まだ分かっていない部分が多いのです。そしてウイルスは、これからも変異し続けます。変異株だからといって、私たちがやるべきことに変わりはありません。これまで通りの基本的感染対策を、個々人が継続していくことが何より大切なのです。  (2021.5.16)