つい世話をしたくなる赤ちゃんの特徴

院長です。前回は、ヒトにおいては、養育者側の子育ての負担が、他の哺乳類に比べて圧倒的に重い、ということを述べました。今日は、それに対応して備わっている赤ちゃんの特徴・能力について述べたいと思います。
自らは動くこともできず、世話をしてくれる大人がいなければ生きていけない赤ちゃんですが、赤ちゃんは、大人たちが自然と「世話をしたくなる」特徴を備えています。
まず一つ目は、赤ちゃん独特の姿形あるいは動きです。「おでこが広くあごが狭い」「大人に比べてより中心にある大きくてつぶらな目」「張りがあり柔らかそうな皮膚」「短くてずんぐりむっくりとした手足」、こういった赤ちゃんの特徴は、大人にとって無条件に魅力的なものです。
二つ目は、赤ちゃんは生まれて間もないころから、ヒトの顔やその表情あるいは体の動きや発声など、ヒトが発するさまざまな刺激に対して特別な関心を示すということです。同時に出生直後から、顔や声を通してさまざまな感情を表現します。必ずしも正確に赤ちゃんの心の状態を映すわけではなく、あくまでも感情らしきものでしかないのですが、それを目にし、耳にした大人は、そこからいろいろなメッセージを受け取ってしまうのです。
三つ目は、赤ちゃんは早くから、周りにいる人の動きや発声にタイミングよく、またリズミカルに調子を合わせたりする傾向があるということです。大人は赤ちゃんを、自分たちに対して何かコミュニケーションをしようとする特別な存在として思うようになり、赤ちゃんとのやり取りの中に、どんどん引き込まれていくことになります。
見方をかえれば、大人にも、なぜだかそうした赤ちゃんの特徴を好ましく感じ、敏感にとらえ、それらにかなりのところ適切に反応してしまえるような能力(仕組み)がもともと備わっているのです。

長い進化の過程は、親子がしっかりと愛着あるいは社会的な絆を築いていけるように、赤ちゃんと大人の両方にそのための仕掛けを準備してくれたのだと思います。    (2014.5.26.)