相楽郡精華町、小児科、助産院、分娩、乳児のスキンケア

悠育会|くわはらこどもクリニック

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乳児の皮膚ケア

1.食物アレルギーの多くは乳児期に発症します

大きく分けると、以下の2つの病型に分けられます。

食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎

頻度の高い食物
→鶏卵、牛乳、小麦、大豆 など

主な症状
この病型は、生後間もなく~3,4ヵ月に、顔から始まる湿疹が徐々に体に広がります。
スキンケアや十分な軟膏療法を行っても、原因食物を除去しないと2ヶ月以上改善しません。
(ただし、乳児期のなかなか治らない湿疹がすべてこの病型とは限りません。)

即時型症状

頻度の高い食物
鶏卵、牛乳、小麦、そば、魚類、ピーナッツなど
主な症状
(以下の症状が、原因となる食物を摂取してから短時間で出現します。)
  • 皮膚症状:かゆみ、じんましん、赤み
  • 粘膜症状:
    (眼症状)目の充血・腫れ、かゆみ、流涙、まぶたの腫れ
    (鼻症状)くしゃみ、鼻水、鼻づまり
    (口腔粘膜症状)口・唇・舌の違和感・腫れ、喉の痒み、イガイガ感
  • 消化器症状:腹痛、嘔吐、下痢、血便
  • 呼吸器症状:喉が締め付けられる感覚、声嗄れ、咳、喘息、呼吸困難
  • 全身性症状:アナフィラキシーショック(頻脈、血圧低下、意識障害など起こる)

2.原因食物の除去についての考え方の基本

食物アレルギーでも、基本的に離乳食の開始や進行を遅らせる必要はありません。
乳児期の原因食物は鶏卵、牛乳、小麦が90%を占めます。離乳食開始時に利用されることの多い米、イモ類、野菜類が原因食物となることは少ないと考えられます。
自己判断により、“念のため”に医師の指示以外の食物を除去しないようにしましょう。

妊娠中・授乳中について

母親が原因で子どもの症状が悪化する場合には、母親も原因食物の除去を指示されることが時にありますが、母親が子どもと同等の除去を長期間必要とすることは、ほとんどありません。
ハイリスク児(両親・同胞に一人以上のアレルギー患者がいる)に対して、アレルギー性疾患発症予防を目的とした妊娠中・授乳中の母親への食物制限は、十分な根拠がなく勧められません。

3.当院における食物アレルギーの管理方法

乳児アトピー性皮膚炎

  • 適切なスキンケアと、必要な場合は十分なステロイド軟膏療法を行う
  • ステロイド軟膏を使用しても改善が得られない場合、改善が得られてもステロイド軟膏を減量または中止すると症状が悪化する場合は、血液検査(特異的IgE検査)を行います。
  • 検査結果が陽性で、症状と合わせ原因食物と判断される場合、従来の治療に加え、原因食物の除去を開始します。およそ半年ごとに検査を行い、その結果と症状とを合わせ、原因食物の摂取を進めていきます
  • 月齢に関係なく、必要を認めた場合は血液検査を行います。
  • 当院では「皮膚テスト」「食物経口負荷試験」「経口免疫療法」は行っていません

即時型症状

  • 疑われる食物について、血液検査(特異的IgE検査)を行う
  • 検査結果が陽性であれば、上記3と同様に経過観察を行う

4.スキンケアの基本

赤ちゃんの皮膚の特徴

  • 大人に比べて薄い
  • 汗の出る穴と毛穴の数が大人と同じ(一生変わらない)⇒単位面積あたり過密に存在しており、汗の出る穴や毛穴に関連するトラブルが起きやすい素地がある
  • 毛穴から分泌される皮脂…新生児期は、母体からのホルモンの影響などで一時たくさん出るが、一般 に大人に比べて少ない
  • 皮膚の角層に含まれるアミノ酸の量が大人より少ない
  • 皮膚表面の状態が季節(生活環境)により大きく変動する
健康な皮膚と乾燥した皮膚の違い

角層のバリア機能を維持するのに大切なのが、皮膚の潤いを保つ「皮脂膜」「角質細胞間脂質」「天然保湿因子」と呼ばれる物質。この3つの物質が少なくなって乾燥した状態(ドライスキン)になると、角層がはがれて隙間ができ、外からの刺激を受けやすくなります。
健康な皮膚を維持するには、乾燥が引き起こす隙間の形成などを保湿により塞ぎ、同時に原因物質が皮膚表面に存在しないように除去する(いろいろな意味での汚れを取り去る)ことが予防につながります。基本は「まずきれいに、そしてしっとり」です。

  • 油性の被膜で水分の蒸散を防ぐ:ワセリン、プロペト、オリーブ油 など
  • 水分と結合して保湿効果を発揮:ヘパリン類似物質(ヒルドイドなど)、ヒアルロン酸 など
  • 天然保湿因子として働く:セラミド、尿素、ヒアルロン酸ナトリウム など

5.乳児アトピー性皮膚炎の治療

スキンケア
きれいに(石けんで洗う)、そしてしっとりと(保湿)、石けんを十分に泡立ててから、できるだけ素手で優しく洗ってください。その後、ぬるま湯でよくすすいでください。下記のサイトが参考になります。
http://www.maruho.co.jp/araikata/index.html
お風呂の後、出来るだけ早く(5~15分以内に)保湿剤を全身に塗ってください。軟膏やクリームは人 差し指の先から第一関節まで、ローションは1円玉大の量で、大人の手のひら2枚分の面積に塗れます。
スキンケアは1日2回が基本です。お風呂のとき以外に、お湯で濡らしたタオルで押さえ拭きし、その後に保湿剤を塗る機会を設けてください。
ステロイド軟膏の使用
スキンケアだけでコントロールできない湿疹については、症状に応じてステロイド軟膏を使用します。
ステロイド軟膏の副作用
  1. うぶ毛が生える
  2. 塗ったところにニキビができやすくなる
  3. 同じ場所に塗り続けると血管がやや目立つことがある
  4. 同じ場所に塗り続けると皮膚がややうすくなることがある
  5. 皮膚がうすくなりすぎて皮膚線条ができることがある
※1~4の副作用はステロイド軟膏の使用量が少なくなると回復します。5は同じ場所に数年間毎日塗り続けると発生し元に戻りません。
ステロイド軟膏は、適切な使用をする限り安全な薬であり、乳幼児に普段処方されることの多いステロイド軟膏で、上記のような副作用が起こることはほとんどありません。医師の指示通りに十分量を使用することが効果を得る上でも、副作用を予防する上でも重要なことです。
最近の研究によると、新生児早期からの適切なスキンケアを行うことにより、アトピー性皮膚炎の発症を予防できる可能性がある、と言われています。また、乳児期のアトピー性皮膚炎が、食物アレルギーをはじめとするアレルギー疾患の発症誘因となっている可能性があるとされています。湿疹のできていない生後早期からのスキンケアの重要性は、今まで以上に強調されるべきだと思います。赤ちゃんの生後早期の湿疹は、「乳児湿疹」ということで、ある程度は仕方がないと考えておられる方も多いかと思いますが、湿疹ができないようにケアすることは、赤ちゃんの将来を考えればとても大切なことです。湿疹で悩まれている方、食物アレルギーについて不安や疑問を抱かれている方は、症状の重症度にかかわらず遠慮なくご相談ください。