相楽郡精華町、祝園駅、木津川台駅、小児科、助産院 くわはらこどもクリニック
 

ブログ:くる病と母乳栄養

 

院長です。昨日の朝のNHKニュース、「おはよう日本」のなかで、くる病についての特集がありました。ご覧になった方もおられるかと思います。最近、この「くる病」の報告が増えており、報道されたものと思われます。
くる病は、ビタミンDの不足およびカルシウムやリンの不足により、骨形成が不十分となることにより起こる病気で、乳幼児期にはO脚や歩行開始の遅れなどの症状がみられます。この番組でも触れられていたのですが、ミルクに比べると母乳に含まれるカルシウムやビタミンDの量が少ないので、母乳栄養が原因であるかのように言われることがあります。最近の報告でも、確かにくる病を発症した乳幼児の多くが完全母乳栄養です。しかし、母乳栄養そのものが原因の一つであるかのような印象を与えることは、適切でないと思います。
ビタミンDは腸管でのカルシウム吸収促進、腎尿細管でのカルシウム再吸収促進し、血液中のカルシウム濃度を上昇させ骨形成に働きます。食事から摂取されるだけでなく、紫外線が皮膚に当たると合成されるのです。冬季の紫外線曝露が少なく、寒冷により外気浴の機会が少ない地域(米国北部、カナダ、北欧、日本では北海道や東北地方)などに居住している色素が多い人種の場合、または伝統的に衣服で肌を覆う習慣のある民族の母乳栄養児には、ビタミンD不足のリスクがあるとされています。最近では、紫外線による皮膚がん発症のリスクを減らすことや美容目的のために、日本でも必要以上に日光を浴びることを避ける習慣が広がり、お母さんも子どもも以前に比べると日光を浴びる機会が不足しています。そのためにビタミンD不足になるリスクが高まっていると言えます。
妊娠中はお母さんから胎盤を通じてビタミンDが胎児に移行し、胎児期の骨形成に働くだけでなく、胎児期に蓄積されたビタミンDが出生後の骨形成にも影響すると考えられています。妊娠中のお母さんがビタミンDを豊富に含む食材を制限したり、紫外線の肌への影響を考えて日光を浴びる機会を減らしたりすることは、胎児へのビタミンDの供給が不十分となり、それが骨形成に影響すると考えられます。さらに、出産後のお母さんのビタミンD摂取量は母乳中のビタミンD濃度に関係するので、同様の生活習慣が続いていると、健康な母乳栄養児でもくる病を発症してしまうことになります。
最近の乳幼児のくる病の増加は、このような生活習慣の変化、特に過度に紫外線を避ける習慣による影響が大きいのではないかと思います。ますはお母さんの妊娠中の生活から変えていく必要があるでしょう。適度な日光浴(服を着て帽子をかぶらなければ、1週間に2時間程度で十分)を意識していただきたいと思います。赤ちゃんも外出可能な時期からの適度な日光浴が必要です。もちろんビタミンDを豊富に含む食事をとること(卵黄や魚)も重要です。番組では食物アレルギーによる食事制限の影響にも触れられていました。たとえアレルギーがあったとしても、過度の食事制限は、同様にビタミンD不足の原因となる可能性があり注意が必要です。
少々長くなりましたが、くる病と母乳栄養についてまとめてみました。実はこれには理由があり…。くる病のリスクをもって、母乳栄養の推奨が躊躇されるようなことがあってはならないと考えます。振り返って、私自身がこれまで、どれだけくる病のリスクをふまえて情報提供できていたかというと、全くの不十分であったと言わざるを得ません。この点については、本当に申し訳なく思っています。この反省を、今後の母乳哺育推進に活かしていきたいと思っています。

 

2013年10月18日

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