院長です。あくまでも私見として、お読みいただければと思います。
 児童相談所での児童虐待相談対応件数は年々増え続けており、平成29年度には13万件を超え、前年度より1万件以上増加しています。このような状況に対する行政の対応は、ソフト面でもハード面でも追いつけていないのが実状だろうと思います。そんな中、千葉県で10歳の女の子が自宅で父親から身体的虐待を受け、亡くなるという痛ましい事件がありました。
 事件が明るみになって以降、児童相談所や教育委員会の対応について、毎日のように批判的な報道が繰り返し流されています。それは事実なのでしょうし、亡くなってしまうという最悪の結果を回避するということを目的とするならば、このような形での報道もやむを得ないことと思います。しかし冷静に考えると、同様の事件が起こるたびに、ほぼ同じ内容の批判的な報道が繰り返されていないでしょうか。問題の本質はそこにあるのかと、いつも疑問に思っています。
 今回の事件の場合、虐待したのは実の父親であり、問題の根幹は父親にあります。今のところ父親からは、反省の言葉は聞かれていないようです。同じく子を持つ父親として信じがたい行為なのですが、では、この父親と私を含む他の父親との違いは何なのだろうかと考えてしまいます。例えば、子を虐待する親は幼少期に虐待を受けていたということがよく指摘されますが、この父親はどうだったのでしょう。さまざまな視点から問題の根幹について考えるための材料を提供することも、報道の役割ではないかと思うのです。
 虐待を受ける子どもの死は防げても、虐待による心の傷は一生残るでしょう。虐待は予防しなくてはならないもので、これまでの対策では不十分であることは、現状を見れば明らかと言えます。虐待が起こった時に、エスカレートしないよう速やかに対処する方策と同時に、虐待が起こらないようにする方策について、特にわれわれ医療者がそれぞれの立場で真剣に考え、具体的行動を始めなければならないと思います。  (2019.2.3.)