受動喫煙について

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 院長です。長い間ご無沙汰してしまい、申し訳ありませんでした。気が付けば春、桜も今年はほぼ散ってしまいましたね。今日は寒の戻りで冷え込んでいますが、明日からまた春らしい日が戻ってくるようです。
 さて、今日は表題にある通り、「受動喫煙」についてお伝えしたいと思います。今朝の読売新聞に以下のような記事が出ていました。書かれたのは元国立がんセンター総長(現在は日本対がん協会会長)の垣添忠生先生です。以下、原文のままです。ちょっと長くなりますが、是非、お読みください。

 

受動喫煙対策 屋内全面禁煙 五輪へ必須:垣添忠生 日本対がん協会会長

  2020年に日本は東京オリンピック・パラリンピック(オリパラ)を迎える。56年ぶりに、4年に1度の人間賛歌の祭典が再び巡ってくる。前回大会と今回で決定的に異なる点がある。前回は必ずしも強調されなかったパラリンピックに今回は強く光が当てられていることだ。
 パラリンピックは様々な障がいのある選手たちが、新しい技術にも助けられて限界に挑む機会である。人の多様性を認め、共生社会を実現するための重要な契機であると、人々に強く認識されるようになったことに他ならない。
 いま一つは、日本が少子高齢社会に突入し、社会のあり方を根本的に考え直さなくてはならない時代となったことだ。とりわけ高齢者も健康で活力ある人生を享受し、働きながら社会に貢献できたらすばらしい。
 両者に共通するのは人間の健康問題である。健康問題を通じてオリパラを考えてみたい。
 17年11月の国際的な医学雑誌のオンライン版に興味深い論文が出た。「世界のがんの約6%は糖尿病と肥満が原因」という。こうした事実は関係者の間では広く認識されていて、13年には日本糖尿病学会と日本癌学会の合同委員会が「糖尿病とがん」に関して詳細な検討を行った。不適切な食生活、運動不足、喫煙、過剰飲酒は糖尿病とがんの共通危険因子である。こうした事実から社会に対しても両学会からの働きかけがなされている。
 がんも糖尿病も、日本が、あるいは世界が抱える大きな健康・医療問題である。両者に共通する危険因子として「運動不足」があるなら、オリパラはこの問題に対して国として取り組む重要な契機となろう。
 定期的な運動でがんや糖尿病を遠ざけることができれば、両者が進行した際に起こる深刻な医療社会問題に対して大きなインパクトを与えるに違いない。
 オリパラに出場する主として若く健康な選手たちの活動を見ながら、日本国民が自らの健康問題を意識する機会となればよい。
 オリパラを迎えるに際して、いま一つ考えなければならない健康問題は喫煙、特に受動喫煙対策である。たばこが、吸う本人だけではなく、周囲の人々の健康にも悪影響を与えることが明らかとなったのは実に30年以上前にさかのぼる。
 国際オリンピック委員会(IOC)は、1988年以降、オリンピックに際して禁煙の方針を採択した。さらに2010年、世界保健機関(WHO)と「たばこのない五輪」を目指すとの協定にも調印した。オリンピック開催国にとって屋内禁煙化は必須要件となってきた。

 「規制なき」日本 不信招く
 
 「たばこのない」オリンピック・パラリンピック(オリパラ)は世界的な潮流である。最近オリンピックを開催したカナダ、英国、ロシア、ブラジルでは当然のことで、世界で55か国が屋内全面禁煙を法制化している。米国は国レベルの規制はないが、州単位で規制されており、50州中27州(2017年現在)でレストランやバーも含め全面禁煙となっている。
 17年4月、日本の喫煙状況を視察した世界保健機関(WHO)のダグラス・ベッチャー生活習慣病予防部長は、記者会見の席上、受動喫煙対策に関して「換気や喫煙室の設置(いわゆる分煙)では効果がない」と明言した。そして日本は「完全に時代遅れだ」と痛烈に批判した。
 「屋内全面禁煙」こそ、明確で実効性ある受動喫煙防止対策であり、国際標準なのだ。たばこは屋内における主要なPM2.5(発がん性のある微小粒子状物質)の発生源である。全面禁煙のみが、その拡散を防ぐ方法との認識が世界的に広まっている。
 国立がん研究センターの推計によれば、わが国では年間1万5000人が受動喫煙で亡くなっている。厚生労働省の有識者検討会は16年夏、喫煙と健康に関する国内外の約1600の論文を分析した結果、周囲の人にとって受動喫煙が、肺がん、脳卒中、心筋梗塞こうそくなど7種類の病気、症状の原因となるのは「確実」と結論づけた。
 妊婦の喫煙や両親の喫煙による赤ちゃんの受動喫煙が乳幼児突然死症候群と関連することもよく知られている。
 このような受動喫煙を防止するのに最も効果があるのは、人が多く利用する飲食店や居酒屋を全面禁煙にすることだ。この問題に対しては直ちに飲食店側から「売り上げが減る」との反対運動が起こるが、その背景にたばこ産業の姿が透けて見える。
 世界の先行研究によれば飲食店を禁煙にしても売り上げは低下しないどころか、屋内全面禁煙により、それまで近づかなかった非喫煙者や子ども連れの家族客が増加し、むしろ増収の店もあるという。つまり顧客層が一変するのだ。
 WHOの下部機関である国際がん研究機関(IARC)による09年の論文では、たばこ産業からの助成の有無によって研究結果を比較検討したところ、たばこ産業とは関係のない研究者による66の論文のうち、63論文(95%)は「屋内禁煙としても収入は減少しなかった」としている。
 他方、たばこ産業と関係のある15の論文のうち14論文(93%)は「減収があった」と結論づけている。つまり、「屋内禁煙化により売り上げが減る」というのは、たばこ産業の強い影響下にある研究者が、ゆがんだ研究結果をまとめたと批判されても仕方あるまい。
 日本政府は、受動喫煙対策を盛り込んだ健康増進法改正案を今国会に提出し、オリンピック開催前の20年4月に全面施行を目指している。飲食店は原則禁煙だが、客席面積が100平方メートル以下で、個人か資本金5000万円以下の中小企業が営む店は、店頭に「喫煙」「分煙」などの表示を義務づけた上で喫煙を認めるという。
 これでは、多くの店で屋内喫煙を認めることになり、何の規制もなされないことにほぼ等しい。
 非喫煙者の客や店の従業員の健康を守ることは絶対にできない。屋内完全禁煙にすれば、健康問題に敏感な若者たちも働きに来てくれるだろう。人手不足が深刻化する我が国での従業員確保問題とも直結する。
 これまで世界のオリパラ開催国で等しく実現できてきたことが、なぜ、20年の東京大会では実現できないのか。
 このままでは、日本国民の健康を守れないどころか、オリパラで日本を訪れる観光客や選手らの不快感、この国に対する不信感を生みかねない。受動喫煙対策に力を入れない国に未来はあるのか。そもそもオリパラ開催国の資格があるのか。筆者は痛切にこの点を指摘したい。

 

 このような内容でした。
 お腹の中の赤ちゃんは、そして子どもは、自ら喫煙の害を避ける術を持ち合わせていません。その点においても大人に依存しており、周りの大人次第です。子どもへの受動喫煙の害の詳細についてこの場では触れませんが、この記事を読めばその重大さは一目瞭然ではないかと思います。JTのCMに惑わされることなく、自分自身、周囲の人たち、そして子どもたちのため、「真実」を知り行動することが、われわれ大人の役割ではないかと思うのです。 (2018.4.8.)