先日の「小児科の先生とおはなししよう」

 院長です。大幅に遅れてしまいましたが、先週の金曜日が、今月の「小児科の先生とおはなししよう」の日でした。テーマは「RSウイルス、インフルエンザウイルス」でした。

 RSウイルスによる呼吸器感染症には、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の児が少なくとも1度は感染するといわれています。潜伏期間は4~5日。咳やくしゃみ又は会話をした際に飛び散るしぶきを浴びて吸い込む飛沫感染や、ウイルスがついている手指や物品(ドアノブ、手すり、スイッチ、机、椅子、おもちゃ、コップ等)を触ったり又はなめたりすることによる間接的な接触感染があります。発症して数日は、発熱、咳や鼻みず、鼻づまりなどの症状が続きます。多くは軽症で経過しますが、初めて感染した時には重症化することがあり、その後咳がひどくなったり、ゼイゼイと苦しそうな呼吸となったりし、呼気性喘鳴、多呼吸、陥没呼吸などを呈する細気管支炎、肺炎へと進展していきます(初感染の30~40%)。特に乳児期早期(生後数週間~数カ月間)に初めて感染した場合は、このように重症化することがあります。
 RSウイルスに感染・発症する児の約80%は、0歳児と1歳児です。RSウイルスに再感染した時には感冒様症状や気管支炎症状のみである場合が多いので、年長児や大人の場合、咳などの軽い症状のみでRSウイルス感染症であるとは気付かれてない場合があります。
 治療は、基本的には対症療法(症状を和らげる治療)を行います。呼吸が苦しそうな場合や、顔色がよくない場合、母乳やミルクの飲みが悪い場合には、入院が必要となる場合もあります。これらの症状がみられるときには、早めに受診するようにしましょう。

 インフルエンザウイルスはA、B、Cと三つの型に分類されますが、いわゆる流行病としてのインフルエンザはA型とB型の2つに分けられます。A型にはA香港型(H3N2)、Aソ連型(H1N1)、A新型(H1N1)があり、B型には山形株とビクトリア株の二種類があります。
 インフルエンザウイルス感染の潜伏期間は1日~3日。感染経路は主に、咳やくしゃみ、そして会話をした際に飛び散るしぶきを浴びて吸い込む飛沫感染です。急激な発熱で発症し、発熱持続期間は2~5日です。A型、B型間でほとんど差はなく、二峰性の発熱を示すことも多いとされています。高熱に加え鼻汁、咽頭痛、咳、くしゃみ、筋肉痛、全身倦怠、頭痛、食欲不振、関節痛、腰痛などがみられます。嘔吐、腹痛、下痢などの消化器症状を示すこともあります。
 インフルエンザの場合、治療法として抗インフルエンザ薬による薬物療法があります。タミフルを含め抗インフルエンザ薬にはインフルエンザウイルスの数を減らす作用は無く、ウイルスの増殖を抑えそれ以上に数が増えないようにすることで体の持つ免疫能を手助けし、それにより治癒までの時間を短縮するという働きを持つものです。回復の主役は体自身であって、抗インフルエンザ薬ではありません。予防法として、インフルエンザワクチン接種があります。インフルエンザワクチンは発病予防だけでなく、重症化予防として接種することをおすすめしています。ワクチン接種によって発病や重症化が予防できるケースが多く、結果として脳炎の予防にもなります。また、妊娠中に母親が受けると生まれた赤ちゃんにも予防効果があります。

 いずれのウイルス感染症も、寒い時期に流行るものです。空気が乾燥するこの時期は、このようなウイルスが繁殖しやすい季節と言えます。さまざまな感染予防策に加えて、部屋の加湿はとても重要ですので、是非取り入れていただきたいと思います。加湿の重要性については、また改めて触れたいと思っています。

 次回は12月22日に開催予定です。詳細は改めてお知らせします。  (2017.11.23.)