院長です。突然ですが、「安全」と「安心」の違い、考えられたことがありますか。「安全」は、客観的な事実によって評価が可能です。「安心」は、心理的要因によるものであって、客観的な評価はできません。「安全」と「安心」は似て非なるもの、といえます。
 ある事柄について、何も知らなければ不安を感じることはありませんが、多少なりとも情報を得ると、不安が一気に上がるのが一般的とされています。情報の量が増えるにしたがって不安は大きくなり、あるピークを超えると不安は小さくなっていきます。
 日々の外来においては、医学的に「安全」とされているものを利用しつつ診療を行っています。しかしそれらのリスクがゼロかといえば、そうではありません。科学的根拠をもって「安全」とされているものでも、例えばどのような薬にも副作用があるように、それを使用することによるデメリットの大きさよりも、得られるメリットが有意に大きいことをもって行われていることがほとんどです。日々の診療の現場においては、自分自身の経験とも照らし合わせ、それらの中から適切と思うものを選んでいます。
 病気のわが子を抱えて受診される親御さんは、病状の重症度にかかわらずそれぞれに不安を抱えておられます。単なる風邪であっても、病気や治療方法についてある程度の情報をお持ちの親御さんの場合は、こちらの予想以上に大きな不安を抱いておられることもあります。正しく診断し、必要な処置を行い、適切な投薬を行っても、それにより不安が解消されるとは限りません。ある処置についてトラブルが起こるリスクが1%であっても、われわれ医療者はその値をそのまま感じ「リスクは僅か」と感じますが、受ける側はリスクがあるか無いかが大切で「五分五分」と感じるといいます。このギャップを埋める、それぞれの人に合った十分な説明が必要になります。
 テレビや新聞、そしてインターネットを通して接する様々な情報をみていると、根拠もなく不安をあおるようなものが最近は特に増えているように感じます。医療に関する情報についても同じことが言え、その中から正しい情報を選び取ることはとても難しくなっています。子どもに関連することでは、例えば食物アレルギーに関すること、ステロイド軟膏のこと、ワクチンに関すること、など。私たち医療者には、医学的に正しい情報を自ら発信することも求められていると思います。
 医療は、人を対象に人が行うものです。大切なのは、お互いの信頼関係だと思います。外来が込み合ってくると、つい先を急ぎがちになってしまうのですが、受診されたお子さん、そしてお母さん、お父さんが、不安を解消しホッとした表情で帰ることができるよう、訴えに耳を傾け、限られた時間の中であっても可能な限りの説明を尽くし、十分な意思疎通を図るように心掛けなければと思っています。  (2017.3.20.)