院長です。前回の続きです。
 お母さん、3回目の出産でした。会陰の裂傷はごくわずかで、縫合の必要はありませんでした。心配されていたお産の後の子宮収縮の痛みも、しっかり収縮しているにもかかわらず軽く、出血もごく僅かでした。そのためか、入院中は大きな問題なくごく普通に動いておられました。 授乳は、決して教科書通りの「正しい姿勢」とは言えませんでしたが、授乳クッションも必要としない自然な姿勢での授乳で、とにかく上手に赤ちゃんが吸着してくれていました。生まれてすぐにお母さんのおっぱいにたどり着けた、そのことが良い影響を及ぼしてくれているのだと思いました。
 うちの助産院の居室には、テレビがありません。赤ちゃんが眠っている時間は、お母さんも一緒にベッドで過ごしておられました。赤ちゃんが泣けば、おむつを変えたり、抱っこしたり、授乳したり、その繰り返しのなかで、徐々に二人のペースが作られていったようでした。助産師が呼ばれることも、本当に少なかったようです。生後2日目からは赤ちゃんが本格的に活動的になり、授乳も昼夜を問わず頻回になりましたが、お母さんは無理なくそれに合わせて過ごしておられました。日齢3から 母乳分泌がアップして、夜にはゴクゴクと飲み込んでいる様子がわかるようになりました。4日目の朝、赤ちゃんの体重は増加しており、予定通りに退院となりました。
 生まれてすぐの赤ちゃんのケアを変えたことが、その後の経過にどの程度影響したのか、それは僕にもわかりません。これまで出産された方と、大きな違いはなかったように思います。産後はお母さんと赤ちゃんはずっと一緒に過ごしてもらっているので、お産の時のどのタイミングでお母さんから赤ちゃんをお預かりするか、その差による影響は、退院時の時点ではほとんどなくなっているように思います。ただ今振り返っても、あの、生まれてすぐの赤ちゃんがお母さんに抱かれている時間は、二人にとって何物にも代えがたいとても大切なひと時なのではないかと感じています。あの時の赤ちゃんの顔、表情が、今も目に焼き付いて離れないからなのかもしれません。お産に携わる私たちにとっても、妊娠中から産後までの途切れることのないケアを提供するうえで、大事な時間だと感じています。今のところ、これは僕の一個人の感覚でしかありませんが、これからお産に立ち会う中で、確認させてもらえればと思っています。  (2017.2.21.)